114A8 選択緘黙について
114回-A8
選択緘黙について正しいのはどれか。
a 思春期に多い。
b 聴力は正常である。
c 言語理解の障害が原因である。
d 脳波検査が診断に有用である。
e 発声練習による治療が有効である。
正解はbです。
選択性緘黙は英語でselective mutismです。
DSM-5では、不安症候群内に分類されています。
自宅での家族の前では普通に話ができるが、学校で先生や友達とは全く話をしないという病気です。
発症は幼児期(3歳前後)から発症し、小学校に入学する頃に気づかれることが多いとされます。よって、選択肢aは誤りですね。
また聴力に異常がなく、言語理解にも異常が無いです。ですので、不安や緊張などが関係して学校などで発語できなくなると考えられています。
よって、選択肢bは正しく、選択肢cは誤りですね。
医学的診断基準として、DSM-5では下記の5項目が規定されている。
- 他の状況で話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況 (例:学校) において、話すことが一貫してできない。
- その障害が、学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている。
- その障害の持続期間は、少なくとも1ヶ月 (学校の最初の1ヶ月だけに限定されない) である。
- 話すことができないことは、その社会的状況で要求される話し言葉の知識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない。
- その障害はコミュニケーション症 (例:小児期発症流暢症) ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。
上記の診断基準を見ればわかるように、明確な診断基準ではなく、
どちらかと言えば、「○○ではないので消去法的に選択緘黙と診断する」といった除外診断の病気になりますね。
尚、参考文献によるとICD11という最新のWHOの統計分類では、選択緘黙ではなく、場面緘黙と記載されているようなので、時期に呼び方が変わるかもしれないですね。
よって、選択肢dの脳波は誤りですね。
最後に治療としては、効果的な薬剤はなく、参考書には非言語的精神療法(箱庭療法、絵画療法、遊戯療法)が記載されていましたが、どこまで効果があるのかは不明ですね。
先程紹介した、
により詳しい情報が書かれているので興味がある方はぜひ見てみてください。
特に日本では場面緘黙に関する研究が非常に少なく、欧米に比べて支援が遅れている。さらに、日本においては、実践的な介入方法が確立されていないため、場面緘黙児に直接接している学校教育の現場には情報が行き渡っていないのが現状である。したがって、学校教育の現場に対して、場面緘黙に関する有益な情報提供が強く求められている。
と記載されているように、日本ではまだまだ研究が進んでいないようです。
自分が小学生の頃を振り返ると選択緘黙のような同級生はいなかった気がするのですが、もしかしたら見逃されていただけなのかもしれないですね。
国家試験的には、診断がつけばそれで終わりなのですが、実際に当事者になった場合や、ご家族はきっと不安になる病気だなと感じました。
また医療者の立場としても、これという決まった治療法が確立されていないので、なかなか難しい病気だなという印象を受けました。
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