精神科医を目指す医大生の備忘録

精神科に興味あるけど、どうやって勉強したらいいかわからない。という悩みを解決するために医師国家試験を解説しつつ、勉強していくことにしました!一般の方でも解けちゃったりするので、ぜひともお付き合いくださいませ!

MENU

114A25 うつ病が疑われる患者の初期対応について

114A25

30歳の男性。このところ仕事に身が入らず遅刻が目立つようになったため、上司からの勧めで産業医面談を受けた。面談で精神科受診を勧められ来院した。入社以来、事務職に携わってきたが、3か月前に営業職に異動した。約1か月前から平日は食欲が低下し、なんとなく元気が出なくなった。休みの前日は熟睡できるが、それ以外の日はなかなか寝つけず、一旦寝ついても職場の夢をみて夜中に目が覚めることが多くなった。欠勤はなく、休日は趣味のサーフィンを以前と変わらず楽しめているという。

初診時の対応として適切なのはどれか。

a 休職を勧める。
b 頑張るよう励ます。
抗うつ薬を処方する。
d 投影法の心理検査を実施する。
e 仕事に関する本人の考えを聞く。

 

正解は、選択肢eになります。

 

本番の医師国家試験でも正答率99%の問題ですので、一般の方でも正答するのは容易の問題だと思います。

 

うつ病が疑われ部分としては、「このところ仕事に身が入らず遅刻が目立つ」、「入社以来、事務職に携わってきたが、3か月前に営業職に異動」、「約1か月前から平日は食欲が低下し、なんとなく元気が出なく」、「休みの前日は熟睡できるが、それ以外の日はなかなか寝つけず、一旦寝ついても職場の夢をみて夜中に目が覚めることが多くなった」でしょうか。

 

逆に最後の「欠勤はなく、休日は趣味のサーフィンを以前と変わらず楽しめているという。」は一時期メディアで話題となった所謂「新型うつ病」が疑われる所見となっていますね。

 

うつ病は、精神科でも最も有名な病気であり、診断基準や治療方法なども多岐にわたりなかなかまとめるのが難しい疾患ですね。

 

疫学としては、厚労省のサイトによると

厚生労働省が実施している患者調査によれば、日本の気分障害患者数は1996年には43.3万人、1999年には44.1万人とほぼ横ばいでしたが、2002年には71.1万人、2005年には92.4万人、2008年には104.1万人と、著しく増加しています。

となっています。10年以上の統計になりますが、統合失調症の統計では約80万人となっているので、精神疾患でもっとも罹患者が多い疾患と言えます。

厚生労働省による調査では、ある1日に統合失調症あるいはそれに近い診断名で日本の医療機関を受診している患者数が25.3万人で(入院18.7万人、外来6.6万人)、そこから推計した受診中の患者数は79.5万人とされています(2008年患者調査)。

 

うつ病DSM-Ⅳ、ICD10までは気分障害に含まれていたようですが、DSM5では気分障害という項目がなくなり、抑うつ症候群と双極性障害がそれぞれ独立した項目となりました。

 

このへんは、なかなかややこしい部分があるのでまた別の機会に書けたらと思います。

いずれにせよ、医師国家試験レベルでは、うつ病はそれほど難しい問題は出ずに今回のように当たり前の対応が聞かれるケースが多く、正答率も概して90%を超える印象です。

 

問題の解説に戻ると、「初診時の対応として適切なのはどれか。」とあるので、いきなり休職をすすめる(選択肢a)や、投薬をすすめる(選択肢c)は除外できます。

 

とはいえ、あくまでも国家試験の正解としてなので、もちろん実臨床の現場では、初回で休職をすすめることもあるでしょうし、いきなり抗うつ薬を処方することもあると思います。(このへんは、医学生の立場ではなかなかわからない部分ですが💦)

 

うつ病の急性期には励ましや気晴らしの誘いは逆効果になることが多いというのは有名な話ですので、選択肢bも不適切ですね。

もちろん、患者本人が自らの意思で気晴らしをしたいというのなら否定すべきではないですが、本人の気分が沈んでいるのに、無理やり気晴らし(遊園地など)をさせても、本人は「前は楽しめたのに、今は全然楽しめない。自分はやっぱりだめだ」とさらに気分が沈んでしまうので良くないですよね。

 

ですので、選択肢eの「仕事に関する本人の考えを聞く。」が初診時にまずやることとしては無難な対応となります。

 

「仕事に関する本人の考えを聞く。」というのは、医師国家試験には良く出るのですが、診察時にやる解釈モデルと同じですよね。

解釈モデルとは、患者が病気に罹患したり体調不良を覚えた時、一人の人間として受ける様々な影響のことを指します。

解釈モデルを理解するためには4つのポイントに分類します。

  1. 解釈:自分の病気についてどう考えているか
  2. 期待:医療者に何をしてほしいのか
  3. 感情:患ってどう感じたか
  4. 影響:患って生活にどんな影響があるか

頭文字をとって「かきかえ」と覚えてくださいね!

 

医学部ではOSCEという、実技の進級試験があるので、そこでさんざん練習したのですが、コロナの影響でなかなか患者さんの前で実習ができない状況ですので、私自身は実践できずにいますが、重要な概念ですよね。

 

まずは、「患者さんがどう思っているのか?」を聞くことで、重要な情報を得るだけでなく、患者さん自身も「ちゃんと話を聞いてくれるお医者さんだ」と安心してくれますしね。

 

ただ、実際の臨床では、患者さん数も多いので常に十分に時間を取るのも難しいと思います。「時間と質のバランス」を先生方はどのようにとってらっしゃるのでしょうか?気になるところですね。

 

最後に選択肢dの「投影法の心理検査を実施する。」ですが、投影法とは、教科書的には「比較的あいまいな刺激材料を提示して、被験者の性格の特性を知ろうとするものである」とされます。

 

神経症性障害(不安症)や統合失調症、境界型パーソナリティ障害の診断に役立つと書かれているので、きっとうつ病には使わないので誤りなのだと思います。

 

投影法の具体例としては、ロールシャッハテスト、バウム・テスト、絵画統覚テスト(TAT)、文章完成テストなどがあります。

 

ロールシャッハテストはインクの染みで出来た10枚の図版を被験者に示して、何に見えるかを答えさせ、その応答を分析することで人格面を検査する。というものですが、詳細は下記に詳しく書かれています。

re-sta.jp

 

回答する側は、思ったことを言えばいいですが、それを診断に利用する医療者としてはなかなか解釈が難しそうな試験だなと思いますね。あいまいなのは精神科の魅力である一方で、他科のクリアカットな診断基準と対比するともどかしさも残りますね。(認知症のMMSEとかは結構はっきり点数つけられますしね。)

 

学生なので実際にやっているのを見たことがないのですが、チャンスがあれば見てみたいですね。

 

医師国家試験の精神科の問題はそこまで難易度は高くないのですが、意外に自分で解説を作ってみると知らないことがまだまだあるなと気づきますね。

 

引き続き、コツコツがんばります。

 

もしよろしければ、励みになりますのでポチリとお願いします!

にほんブログ村 大学生日記ブログ 医大生へ

ツイッターもしてますので良ければ覗いてください!

twitter.com

 

お問い合わせ  プライバシーポリシー