精神科医を目指す医大生の備忘録

精神科に興味あるけど、どうやって勉強したらいいかわからない。という悩みを解決するために医師国家試験を解説しつつ、勉強していくことにしました!一般の方でも解けちゃったりするので、ぜひともお付き合いくださいませ!

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医師国家試験から学ぶ「双極性障害の症状とは?」医師国家試験114C57 

マンガ「Shrink-精神科医ヨワイ-」2巻の玄さんと似た症例?

114C57(2020年度) 医師国家試験 精神科

43歳の男性。自営業。すぐに機嫌を損ねて怒鳴るようになったため、妻と母親に説得されて来院した。3か月前に父親が急逝してからしばらくの間、元気がなく、家族と話さなくなった。1か月前から店で必要以上にたくさん仕入れをするようになり、従業員に対して大声で怒鳴りつけるようになった。商品陳列の場所を何度も変え、始終移動させているようになった。元来ほとんど飲酒をしなかったが、毎晩飲酒をするようになったという。多弁で、感情の動きが激しく表出され、話題が際限なく広がる。本人は受診について不満であり、精神的なストレスで悲観的な考えに陥っている家族の方に治療を受けさせたいと述べている。これまでに発達上の問題はなかった。血液検査、頭部MRI及び脳波検査に異常を認めない。

この患者にみられる症状はどれか。2つ選べ。

a 感覚失語
b 観念奔逸
c 行為心迫
d 連合弛緩
e 小動物幻視

 

今回の問題は双極性障害についてですね。

マンガ「Shrink -精神科医ヨワイ-」の2巻にも登場する ラーメン「さざ波屋」新宿本店店長の 谷山玄さんも自営業なので似ていますね!

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shrink2巻より

 

さて今回の問題から双極性障害が疑われる所見を抜き出してみると

 

◆うつ症状

「3か月前に父親が急逝してからしばらくの間、元気がなく、家族と話さなくなった。」

父親の死というショッキングな出来事が、患者さんがうつ状態になるきっかけだったと考えられますね。

 

躁状態

  • 「1か月前から店で必要以上にたくさん仕入れをするようになり、従業員に対して大声で怒鳴りつけるようになった。」
  • 「商品陳列の場所を何度も変え、始終移動させているようになった。」
  • 「元来ほとんど飲酒をしなかったが、毎晩飲酒をするようになったという。」
  • 「多弁で、感情の動きが激しく表出され、話題が際限なく広がる。」
  • 「本人は受診について不満であり、精神的なストレスで悲観的な考えに陥っている家族の方に治療を受けさせたいと述べている。」

この辺は、明らかに躁状態ですよね。

今回の問題はこれらの躁状態のうち、医学的な用語で説明できる所見はどれか?と聞いているわけです。

 

正解は「b 観念奔逸」と「c 行為心迫」になります。

 

「 観念奔逸」とは、次々に考えが浮かび、思い付きで思考の方向がそれてしまうため、まとまらないことを指します。英語では「flight of ideas」なのこっちの方が直感的でわかりやすいですね。

 

今回の問題文では「多弁で、感情の動きが激しく表出され、話題が際限なく広がる。」の部分ですね。

誰でも話に熱中していると「次々話が脱線してしまって、あれ何の話してたっけ?」ってことありませんか?あれに近い感じです。

例えば、「先週の半沢直樹の生放送おもしろかったよね。香川照之1時間ずっと大和田常務の演技続けてたよね。あ、香川さんって言ったら、最近TOYOTAのCMに出ててほんと大活躍だよねー。そういやTOYOTAといったら、日産買収するかもしれないって噂あるけど本当、カルロスゴーンさんの件で日産も大変だよね。ゴーンさんホリエモンと対話してたしねーーー  ・・・あれ、自分何の話してたっけ?」といった感じのイメージでしょうか?w

 

きっと躁状態の人の頭の中はものすごい勢いで回転しているので、一つの話題を話しているうちに、別の話題が浮かんでそっちに引っ張られてしまうんでしょうね。

 

ラップ歌手のカニエ・ウェスト双極性障害と言われているので、アイデアがたくさん浮かぶからこそ、あそこまで活躍できるのかもしれませんねー。

 

次に「 行為心迫」とは「何か行動をしなければいられなくなる」状態をさします。

今回の問題で言うと、「商品陳列の場所を何度も変え、始終移動させているようになった。」が該当しますね。

 

Shrink2巻に登場する玄さんは、うつ状態に対して抗うつ薬を飲んだために躁転してしまって、ラーメン屋で「豊洲市場の卸しとコラボして魚介ラーメンを日替わりで出すんだ」と息巻いていたのも、ある種の行為心迫ですね。

 

ちなみに双極性障害にはⅠ型とⅡ型があって、Ⅰ型は躁病エピソードがある場合、Ⅱ型は軽躁エピソードがある場合とされます。

 

躁病エピソードと軽躁病エピソードの違いは自分もあまりよくわかってないのですが、以下のイメージのようです。

躁状態」は明確に異常な気分の高揚がありトラブルを起こすこともあるので、「躁状態」と自覚できる、あるいは、人からそう指摘されることは多いです。

しかし、「軽躁状態」は患者さん本人にしてみれば気分が良い状態なので、何ら問題はなく、「軽躁状態」と自覚することはほとんどできませんし、周囲の人も気がつかないことが多くあります。

双極性障害(躁うつ病)|春日井・小牧の診療内科-あいち心身クリニック

 

この患者さんは、家族に連れられてきているのでShrink2巻の玄さんと同様に双極性障害Ⅰ型と言えますね。

 

双極性障害は、他にも怒りっぽくなったり、楽観的な思考になって「自分は天才で大発明をした」と誇大妄想に至ることもあるようです。浪費をしたり、睡眠時間が短縮したり、性的にだらしなくなったりすることもあるようです。

 

Shrik2巻では、このへんが本当に上手く描かれているなと関心しました。やはりマンガって素晴らしいですね!

 

ということですので、興味がある方はぜひ「Shrink -精神科医ヨワイ-」の第2巻を読んでみてください!

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Shrink 2巻

おまけ:

残りの選択肢も簡単に説明しますと

a 感覚失語…これは医学的にはWernicke失語ともいわれるのですが、脳の障害で「しゃべることはできるが、言葉の理解ができないので、意味不明な発言をする」という感じですね。


d 連合弛緩…これは統合失調症にみられる症状ですね。統合失調症の患者さんによく見られるそうですが、何をいいたいか周囲の人によく伝わらない状態ですね。


e 小動物幻視…これはアルコール依存症の人が、離脱した際にでてくる症状ですね。なぜか虫が見えるようですね。不思議ですね。

 

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