強迫と妄想の違いは自分でおかしいと自覚していること!? 医師国家試験 114F6
強迫観念とは、自分の意思に反する不条理な観念
医師国家試験 2020年度 114F6 精神科
「車を運転していて人をはねてしまったんじゃないかと思うんです。そんなことはないと分かっているんですが、どうしても気になります」という患者の訴えから考えられるのはどれか。
a 強迫観念
b 作為体験
c 罪業妄想
d 滅裂思考
e 妄想着想
今回は、強迫性障害についての問題ですね。ですので、正解はaの強迫観念になります。
医師国家試験がこんな簡単な問題でええんかい!?って突っ込みたくなるレベルですが、他の選択肢が結構難しいので、それらを知らないと案外迷うのかもしれないですよね。
強迫性障害とは?
強迫性障害は、自分でも「おかしい」と感じているのに、ある考えや行為にとらわれてしまうことをさします。
例えば、外出の際、家を出てからしばらく経ってから、「あれ?ちゃと鍵をかけたっけ?」と気になって家に戻って確認するという経験はありませんか?
一度家に戻って確認するだけなら、「鍵をかけるときにぼボっーとしてたのかな?」程度で片付きます。
しかし強迫性障害の患者さんは、これを何度も繰り返してしまうのです。自分でも不合理だとわかっているのに。鍵がかかっていると確認して、また出かけては途中で不安になって戻ってくるというのを繰り返してしまうんです。絶対につらいですよね。
今回の問題でも
「車を運転していて人をはねてしまったんじゃないかと思うんです。そんなことはないと分かっているんですが、どうしても気になります」
という患者さんのセリフそのものが強迫性障害の症状そのものを物語っていますよね。
自分では人をはねたはずはないと自覚しているにも関わらず、「人をはねてしまったのではないか?」という考えが頭から離れないという点がポイントですね。さすが医師国家試験ですね。毎回勉強していて、丁寧に病態を反映して作られているな―と関心させられます。
強迫性障害の具体例は多種多様
強迫性障害には次のような例があるようですね。
- 潔癖(自分以外は汚れていると考えて、ドアノブに触れない。あるいは、手を血が出るまで洗い続ける)
- 保存(本当は不要だと思っていてもゴミが捨てられない。ゴミ屋敷への移行)
- 整理整頓(本棚の本の位置が少しずれていると直さないと気が済まない。)
これ以外にも患者さんに応じて色々ありそうですよね。
ちなみに強迫には強迫観念と脅迫行為があります。
強迫観念は、実際には手が汚れていないけど、汚れているように考えてしまうといった、自分の意思に反する不合理な考えをさします。
一方で、強迫行為は、強迫観念に対して実際に行動に移すことを指します。例えば手が汚れているという強迫観念に対して、繰り返し手を洗うことで対処するという感じです。
治療はうつ病にも使う薬を使用
強迫性障害では、「自分でおかしいと思っているのに、ある考えや行動を辞められない」ということですので、本当につらいなと想像できます。
現在は脳内でセロトニンというリラックスさせる物質の調節が上手くいっていないことが原因と考えられているようです。
ですので治療法も脳内でのセロトニン量を増やすSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬が第一選択となっているようです。
このSSRIはうつ病でもよく用いられる薬なので知っている方も多いのではないでしょうか?ジェイゾロフトとかパキシルという商品名で販売されていますね。
このSSRIはうつ病や強迫性障害だけでなく、パニック障害や社会不安障害などでも使われる精神科では大活躍の薬ですね。また機会があれば解説してみたいと思います。
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おまけ(残りの選択肢解説)
b 作為体験→これは統合失調症で良く見られますね。他人によって考えさせられていると感じる状態ですね。
c 罪業妄想→これは以前も解説しましたが、うつ病でみられる妄想ですね。「自分の価値を過小評価してしまう」という妄想でした。
d 滅裂思考→これも統合失調症でみられます。おしゃべりの内容が関連のない話題にどんどん変わってしまう状態ですね。「今日は学校に行ったのですが、イギリスの天気は晴れです」みたいな、理解不能な発言がみられるようです。
e 妄想着想→妄想着想は統合失調症に見られますね。「妄想が想い着く」という言葉の通り「自分はキリストの生まれ変わりだ!?」といった感じの妄想をする状態です。なぜこのような妄想をするのかは、こちらを参照ください。