会話中に突然眠ってしまう!?~ナルコレプシーとは~ 医師国家試験 113A12
ナルコレプシーは通称「居眠り病」
医師国家試験(2019年度) 113A12 精神科
ナルコレプシーの患者の訴えと考えられるのはどれか。2つ選べ。
a 「会議中に突然眠ってしまいます」
b 「毎日明け方になるまで眠れません」
c 「大笑いすると突然全身の力が抜けます」
d 「足がむずむずして動かさずにいられません」
e 「毎晩眠れないのではないかと不安になります」
今回はナルコレプシーという病気についての問題です。
うつ病や認知症と言われたら誰でもイメージがつくと思いますが、ナルコレプシーと言われてもピンと来ない方は多いのではないでしょうか?
私自身も医学部に入学するまでこんな病気があるなんて知りませんでしたね。
ナルコレプシーは睡眠発作?
ナルコレプシーは直訳すると「ナルコ=睡眠・麻痺」、「レプシー=発作」を意味するギリシャ語に由来するそうです。ちなみに、1880年にフランス人のお医者さんが命名したそうです。(日本では明治13年で自由民権運動が盛んな頃です。)
「睡眠発作」という直訳からわかるように睡眠に関係する病気だとわかりますね。
ナルコレプシーには特徴的な4つの症状があるようです。
- 睡眠発作:日中、打ち勝ちがたい眠気におそわれて眠りこんでしまう
- 脱力発作:怒り、笑いなどの強い感情の変化によって突然筋肉の緊張がなくなる(倒れるなど)
- 睡眠麻痺:いわゆる金縛り
- 入眠時幻覚
この4つの症状からイメージされる日常生活は「夜眠りにつくと、いきなり恐ろしい夢を見る。驚いて目が覚めると、今度は金縛りで体が動かない。結局あまり眠れずに朝を迎える。仕事に行っても、強い眠気に襲われて眠ってしまう。また会議中に同僚の面白いジョークで笑った瞬間に膝がガクンとくずれて倒れそうになる。」といった感じでしょうか?
もちろん4つの症状が同時に発症するわけではないですし、程度も人それぞれでしょうが、なかなか大変な病気だということは容易にわかりますね。
ちなみに、手元にある精神科のテキストにナルコレプシーの睡眠発作について興味深い記述があったので、抜粋させていただきます。
「学生諸君が授業中、先生のつまらない講義を聞いているうちに耐え難い眠気におそわれて眠り込んでしまっても異常とはいえないでしょう。でも、もし講義をしている最中の先生自身が耐え難い睡眠発作におそわれて眠り込んでしまったら異常と考えなければいけません。ナルコレプシーの睡眠発作とはそのようなものなのです。 」
ナルコレプシーの特徴的な症状が出るのはなぜ?
確実なメカニズムはわかっていないようですが、近年の研究で一部解明されてきているようです。
まず根本的な原因として、遺伝が関わっているのではないか?と言われています。日本人のナルコレプシー患者さんでは白血球の血液型と言われるHLAの中のDR2がほぼ全例で陽性であるとされています。
またオレキシンという物質の量が少ないのが原因ではないか?と考えられているようです。オレキシンは、脳の神経同士の情報伝達を担う物質です。
先程説明した、情動脱力発作(笑った時に膝の力が抜けてガクッとなる)は、脳の扁桃体という部分が過剰に活性化するための生じると考えられています。
オレキシンは、この扁桃体が過剰に活性化しないようにコントロールしてくれる物質です。ですので、オレキシンが十分にある健常な人では、泣いたり笑ったりしても脱力発作は起こりません。
一方、オレキシンの量が少ないナルコレプシーの患者さんでは抑制が効かずに脱力発作が起こってしまうようです。
またこれ以外にも、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムの異常が入眠時の幻覚に関係しているようです。(睡眠については、また睡眠障害の問題の際に詳しく解説できたらと思います。)
問題の答え
ということで今回の問題を見ていきたいとおもいます。
正解は、選択肢のaとcですね。
a 「会議中に突然眠ってしまいます」→これが、睡眠発作ですね。
c 「大笑いすると突然全身の力が抜けます」→これは、情動脱力発作ですね。
誤選択肢も見ていくと
b 「毎日明け方になるまで眠れません」→これは、不眠症が疑われる所見ですね。
d 「足がむずむずして動かさずにいられません」→これは「むずむず脚症候群」という病気の症状ですね。中高年の不眠の原因となる病気で、夜眠る時に脚にむずむずした感じや違和感が生じる病気です。
e 「毎晩眠れないのではないかと不安になります」→これは一見睡眠に関する病気のように思われますが「不安」というキーワードから不安障害の訴えだとわかりますね。
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おまけ~カタプレキシーとカタレプシー
ナルコレプシーの症状である情動脱力発作を英語でカタプレキシーと言います。
よく国家試験のひっかけとして登場するのが、カタレプシーという言葉です。
カタレプシーとは、統合失調症に見られる症状の一つで、「他動的にとらせた姿勢をそのまま保ち続ける」というものです。
カテプレキシーとカタレプシーが似ているので、ひっかけ問題が良く出されますね。
何度も繰り返していれば覚えるのかもしれないですが、個人的な度忘れ防止方法として
「ナルコレプシー」が合計7文字なので、出てくる症状も7文字の「カタプレキシー」と覚えています(笑)
すごいしょうもないですが、試験は受かれば良いのでどうしても覚えれない人は参考にしてください(笑)