言葉のサラダってなんじゃらほい!? 医師国家試験 113E9
連合弛緩が悪化するとサラダになる!?
医師国家試験(2019年度) 精神科 113E9
双極性障害でみられる思考障害はどれか。
a 連合弛緩
b 滅裂思考
c 思考途絶
d 言語新作
e 観念奔逸
今回も前回に引き続き、双極性障害についての問題です。
前回の記事はこちらです!「双極性障害が近年注目されているのはなぜ?」
双極性障害は、躁状態とうつ状態の両方が出てくる病気ですが、様々な特徴的症状が出てきます。
例えば、今回の正解はeの観念奔逸(かんねんほんいつ)なのですが、これは部分的に関連のある話題が次々と浮かんで出てくるというものです。
以前書いた記事の例を再掲すると、
例えば、「先週の半沢直樹の生放送おもしろかったよね。香川照之1時間ずっと大和田常務の演技続けてたよね。あ、香川さんって言ったら、最近TOYOTAのCMに出ててほんと大活躍だよねー。そういやTOYOTAといったら、日産買収するかもしれないって噂あるけど本当?。日産もカルロスゴーンさんの件で大変だよね。ゴーンさんと言えばホリエモンと対談してたよね! ・・・あれ、自分何の話してたっけ?」といった感じでどんどん話が脱線していくイメージです。
という感じですね。
観念奔逸は、お酒で酔っぱらった時にも出てくるので、誰しも一度くらいは見たことがあるのではないでしょうか?
なぜ精神科の用語はこんなに難しいのか?
自分が精神科の勉強をはじめて最初につまずいたのは用語の難しさです。
精神科の用語はとにかく難しい(´;ω;`)
例を挙げると「離人・解離・奪取・転換・言葉のサラダ・保続・両価性・途絶・制止・心迫・幻覚・錯覚・妄想」などです!
いやー、正直意味不明ですよね。
言葉のサラダって何やねん!?、小学校で昔習った「人種のサラダボウル」のこと?という感じですよね。
ただ、残念ながら医師国家試験でも結構問われて、正答率はやや低めになる傾向ですね。
なぜこんなに難しい言葉を使うのでしょうか?
専門用語は円滑なコミュニケーションのための手段!
「生半可な気持ちで精神科医を目指さないようにわざと難しくしているんじゃないか!?」などと疑ったこともありますが。。。
真面目な話をしますと、物事を適切に議論するためには、きっちりと定義された言葉を使用する必要があるからですね。
例えば、医学で最たる例が解剖学でしょうか?
解剖学は、心臓とか骨の名前や位置を定義する学問ですが、解剖学が存在しないとたちまち医療者間のコミュニケーションは崩壊しますね。
例えば、救急現場を想定しましょう。
救急隊員さんが、搬送先病院の救急医に対して情報提供をする際に、「患者さんがお腹を痛がっています。お腹の真ん中の方が痛いようです。」という表現だと、ある程度は情報が伝わります。
ただ、医学用語を用いれば、お腹の真ん中には「心窩部」、「臍部」、「下腹部」の3ヶ所あり、それぞれの箇所によって想定される病気も変わってきます。
つまり、医学用語によって、より厳密な議論ができるわけです。
例えば、心窩部痛なら「急性膵炎という膵臓の炎症かな?」とか大体のイメージがつくわけです。
救急現場では一分一秒を争う世界ですから、より厳密な議論をして救急車の到着前に、しっかりとこの疾患かな!?と準備できる方が良いですよね。
精神科でも同様の理由で専門用語が存在すると思います。
とはいえ、個人的には他の診療科よりも精神科用語の難しさは群を抜いていると思いますが苦笑
問題の解説はこちら!
ということで、仕方ないとはわかっているのですが、精神医学にはあまりにもイメージしにくい用語が多すぎるので、頑張ってイメージしやすいように工夫してみたいと思います(笑)
観念奔逸はアイデアが脱線してくイメージ!?
個人的なイメージは、話の本筋からどんどん外れていくので、考え(観念)の乗ったトロッコが線路から脱線(奔逸)をするというのを繰り返す感じでしょうか?
双極性障害の躁状態にはドパミンという物質が関与しているという仮説があり、アイデアが頭にどんどん湧いて出るイメージもできますね。
英語ではflight of ideas(=考えが飛ぶ)なので、こちらで観念奔逸を表現するとこんな感じでしょうか?
個人的にはこっちの方が直感的にわかりやすいですね!
連合弛緩は、脈絡のない話題が連なること!?
続いて選択肢aの連合弛緩(れんごうしかん)ですが、これは統合失調症で見られます。
連合弛緩は医学的には「思考を構成する観念の間に意味の結びつきが乏しくなる」ことと定義されます。
簡単に言うと、これまで話をしていた内容と脈絡なく、関係のない内容をどんどん話出すという感じです。
具体的には
「私は3歳ですが、今日の天気は晴れです。サッカー選手になりたいです。カレーライスも大好きです。」
といった感じに「年齢」「天気」「スポーツ」「食べ物」と全く関係のない話題が関連性なく出てくる感じのようです。(見たことないので、あくまでも想像ですが💦)
英語ではloosening of associationsで、直訳すると「関連がゆるんでいる」ですね!ここから「話の関連性が緩まっている」とイメージできるでしょうか。
連合は「関連」という意味の「associationsが、弛緩はゆるむという意味のlooseningが相当しますね。
で、この「連合弛緩」が悪化したものが選択肢bの滅裂思考です。英語ではincoherence of thoughtです。
「coherence」が一貫性という意味があるので、inと否定の接頭語がつくことで、「思考に一貫性がない」と直訳できますね。
連合弛緩(loosening of associations)では、話がなんとかつながっていたのが、滅裂思考(incoherence of thought)では完全に支離滅裂となるイメージでしょうか。
ちなみに、先ほどの私の例は、連合弛緩というより滅裂思考な気がしてきました(本物を見たことが無いので分からないですが・・・(´;ω;`))
冒頭の「言葉のサラダ」も滅裂思考と同義で使われるようです。
※参考書によっては、滅裂思考という大きな枠組みの中に、軽症の連合弛緩と重症の言葉のサラダがあるという記載もありました。
これを踏まえて、正常→連合弛緩→言葉のサラダを図示したのが下のイラストです!
あくまでもざっくりとですが、イメージがつくでしょうか?
観念奔逸と連合弛緩の違いは?
頭の中でどんどんアイデアが出てくるイメージは双極性障害で見られる観念奔逸でも、統合失調症で見られる連合弛緩でも同じですよね。
両者の違いはどこになるのでしょうか?
海外のサイトを調べていると
✦ 観念奔逸=Flight of ideas (fragmented ideas; frequent shifts in conversation topics)
✦ 連合弛緩=Loosening of associations (minimal logical connection between thoughts)
観念奔逸に関しては、断片的なアイデアが湧き出るイメージでなおかつ、それに応じて話題がどんどん切り替わるという感じですね。
こちらでは、会話が成り立たないということはなく、相手に「さっき話していたことはどうなったの?」と質問されて、話が基に補正可能なイメージですかね。
一方の、連合弛緩は、「思考と思考の間の最低限の論理的なつながりがある」と書かれているので、正直まともに会話をするという感じではないですね。一方的に患者さんが話をしていて、それを聞き手が努力すれば理解ができるといったレベルでしょうか?
このへんは、自分自身が見たことが無いので、なかなか歯がゆい所ではあります。
思考途絶と言語新作も統合失調症で見られる
残りの選択肢の「c 思考途絶」や「d 言語新作」も統合失調症で見られる症状です。
力尽きたのでイラストは別の機会にがんばりますが(笑)
思考途絶は「患者さんが話をしている途中で急に黙りこくり、かと思えば突然会話を境する」という感じのようで「急ブレーキ、急発進」のイメージですね!
言語新作は、誰も知らない言語を作り、本人しかわからない意味付けをするというものだそうです。なかなか不思議な症状です。ネットで調べた佐賀大学精神科教室のサイトの載っていた例では、
(具体例)「体性と増性」「本人の一任は自在賦体」「私は養覚学者である」
と記載されていました。正直「???」という感じで、なかなか不思議だなーと改めて思わされます。
見たことない症状をイメージで表すのも難しいですが、引き続き自分なりにわかりやすく解釈していければと思います!(言語新作とか、実際にどんな感じなんでしょうねー)
以上、長文お付き合いありがとうございました!
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