精神科医を目指す医大生の備忘録

精神科に興味あるけど、どうやって勉強したらいいかわからない。という悩みを解決するために医師国家試験を解説しつつ、勉強していくことにしました!一般の方でも解けちゃったりするので、ぜひともお付き合いくださいませ!

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114A70 認知症に有用な検査

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76歳の女性。物忘れが多くなり、何度も同じことを尋ねるようになったことを心配した家族に付き添われて来院した。約1年前から軽度の意欲低下がみられていたが、ここ3か月間は食事を作るものの同じ献立を何日も連続して作るようになってきたという。身体所見に異常を認めない。Hamiltonうつ病評価尺度4点(0点〜7点:正常)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉16点(30点満点)。頭部MRIで海馬の軽度萎縮が認められた。

この患者の機能評価に有用な検査はどれか。2つ選べ。

a Rorschachテスト
b 津守・稲毛式発達検査
前頭葉機能検査〈FAB〉
d 状態特性不安検査〈STAI〉
e Wechsler記憶検査〈WMS-R〉

 

正解はcとeですね。

 

今回は、認知症についての問題です。

認知症の定義としては「いったん正常に発達した記憶・学習・判断・計画といった脳の知的機能が後天的な脳の器質障害によって持続性に低下し、日常・社会生活に支障をきたす状態」とされます。

 

加齢による物忘れは誰でも起こります。では、認知症と物忘れの違いはなにでしょうか?

それは、加齢による物忘れは、体験したことの一部を忘れる一方で、認知症では体験したことの全体を忘れるという点です。例えば、テレビを観るという行為で言えば、物忘れでは「見た番組の内容は覚えていない」が、認知症では「テレビを観たこと自体を忘れる」といった感じです。

 

世界有数の高齢化が進む日本では、65歳以上の7人に1人、85歳以上では2人に1人以上が認知症であると言われています。

 

さて、今回の問題についてですが、認知症の診断をどのように進めるか?(診断のために必要な検査は何か?)が問われています。

 

認知症といっても実は様々な種類があり、有名なものとしてはアルツハイマー認知症、Lewy小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。これらは主に脳の神経の異常で起こりますが、これ以外にも脳の血管が原因で起こる脳血管性認知症や、交通事故や外傷で起こる慢性網膜価血腫や、甲状腺という臓器が原因で起こる甲状腺機能低下症などもあります。

 

精神科医や脳神経内科医は数多くある認知症の中から、どの認知症かを特定していく必要があります。

 

また認知症と間違えられやすい病気としては、うつ病やせん妄があります。うつ病では、意欲が減退するため、それによって記憶力低下が生じるため、時に認知症と間違われることがあるそうです。これをうつ病性仮性認知症と言います。

 

次にせん妄ですが、せん妄は脳疾患や全身疾患などによって出現する軽度の意識障害に、睡眠障害や興奮、幻覚が加わった状態をさします。せん妄は、手術後にICUなど常に明るい環境に置かれた場合に発生する術後せん妄などが有名ですが、高齢者の場合は薬剤によってせん妄が引き起こされる可能性もあるようです。

 

特に認知症の初期には記銘力障害(新しく物事が覚えられない)と意欲低下が見られるため、うつ病との鑑別が困難であると言われます。

 

今回の問題でも「約1年前から軽度の意欲低下がみられていたが、ここ3か月間は食事を作るものの同じ献立を何日も連続して作るようになってきたという。」とあり、意欲の低下と記銘力障害が見られています。

 

よって、うつ病と鑑別するために、「Hamiltonうつ病評価尺度4点(0点〜7点:正常)」が実施されたのだと考えられます。

 

「Mini-Mental State Examination〈MMSE〉16点(30点満点)」は、認知機能低下を検査するための検査です。1975年にアメリカで開発され、国際的に用いられてる検査になります。これ以外にも、1974年に長谷川和夫先生が改定され、その後改定された、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)も同様の検査として用いられています。

 

MMSEは国家試験で基準値が与えられていないので23点がカットオフと覚えておく必要があるようです。(ちなみにMMSEのSE部分からEを反転させて23点と導き出す覚え方が有名ですよね。またHDS-RはDSを反転されたら20に見えるというのも同様に有名ですね。)

 

今回の患者は、うつ病の検査は正常で、認知機能の検査は陽性であったため、認知症の疑いが高くなります。そこで、頭部MRI検査を実施して「海馬の萎縮」が認められました。

 

海馬は記憶の形成に重要な部分であるということは有名ですね。ちなみに海馬という名前はローマ神話に出てくるヒポカンパス(馬の上半身に魚の尾がついた想像上の動物)に似ているから海馬と命名されたそうです。

 

この海馬の萎縮というのは、認知症の67%を占めるアルツハイマー認知症で有名な所見ですので、この患者はアルツハイマー認知症だと考えられますね。

 

今回の問題は、アルツハイマー認知症の患者の状態をより詳細に把握するために必要な検査は何か? と聞いているわけですね。それぞれの検査を見ていくと、

 

a Rorschachテスト

→以前にも記載しましたが、統合失調症に用いる検査です。インクの染みを見せて患者さんがどのように感じるかを調べる検査ですね。ですので誤りです。

 

b 津守・稲毛式発達検査

→発達とあるので乳幼児の精神発達を見るための検査です。対象の子供の年齢に合わせ3種類あり、また解答をするのはご両親となります。乳幼児が自分で回答するのは難しいですもんね。

 

前頭葉機能検査〈FAB〉

→これは名前のとおり、前頭葉機能を測定する検査です。機能評価に有用な検査を問われているので、その時点でこの選択枝は正当と言えますよね(笑)

ちなみにアルツハイマー認知症では、初期は頭頂葉と側頭葉の機能が主に低下しますが、進行すると前頭葉機能が低下するため、患者さんの進行度を確認するためには重要な検査だと言えますね。

 

d 状態特性不安検査〈STAI〉

→不安とあるようにうつ状態を評価するための検査ですね。すでにうつ状態ではないと別の検査で判断できるため、今回は誤りとなります。

ちなみにSTAIは、不安を、置かれた状態によって変化する一時的な状態不安(state anxiety)と、比較的安定した反応傾向としての特性不安(trait anxiety)に分け、各々20項目についての自己記入式で評価する検査だそうです。なかなかやったことがないのでイメージがわきにくいですね💦


e Wechsler記憶検査〈WMS-R〉

→これも「記憶」とあるので正解ですね。Wechsler記憶検査は世界的に最も使用される記憶検査だそうです。このへんも実習で一度見てみたいですね。

 

以上が解説になりますが、精神科は検査の種類が多いのでなかなか難しいですねー(´;ω;`)

個人的には、筑波大学の松崎先生のYoutubeがわかりやすいので、よく参考にさせていただいています。よければご覧になってください。

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