いつ何時も休まることがない?~医師国家試験で学ぶ全般性不安障害
いつも緊張して、休まるときがありません!?
今回は、全般性不安障害という病気について紹介したいと思います。
まずは医師国家試験問題を見てみましょう。
医師国家試験 第103回A39
62歳の女性。物忘れを主訴に1人で来院した。半年前から大切なことを忘れそうで何かとメモを取るようになった。メモを取っても取り忘れたのではないかと落ち着かなくなる。だんだん記憶力が落ちてきたと思う。楽しみにしていた友人との旅行を、旅先で体調を崩すのが心配になって取りやめてしまった。救急車のサイレンを聞くと、孫が事故にあったのではないかと気もそぞろになる。動悸がしやすく、時々めまいもするが、家事全般はこなしている。身なりは整い、動作は機敏で、面接中はやや緊張しているが、受け答えは適切である。
考えられるのはどれか。
a うつ病
b Pick病
c 全般性不安障害
d 身体表現性障害
e Alzheimer型認知症
正解はこちらをタップ
c 全般性不安障害
日常生活に影響が出るほど、不安が大きくなると病気かもしれない
大勢の前で話をしたり、大事な試験の時に緊張することは誰でもありますよね。
でも心配が過剰になって、日常生活にまで影響が出てきたらそれは不安障害という病気かもしれません。
細かい分類を省くと不安障害には大きく4つあります。
このうち、社会不安障害については以前、解説させていただきました。
あがり症は実は病気かもしれない?~社交不安障害について 医師国家試験113E19 - 精神科医を目指す医大生の備忘録
今回紹介するのは全般性不安障害という心の病気です。
全般性不安障害とは?
全般性障害とは、日常生活の様々な出来事に不安を感じ、その不安のせいで社会生活に悪影響が生じている状態をさします。
特に6カ月以上持続するというのが、一つの診断基準になります。
以前紹介した社交不安障害であれば、人前で話すときに限定されていましたが、今回の全般性不安障害は、
「日常生活の様々な出来事に」
というのがポイントですね。
例えば、学校や仕事のこと、家族や友人関係、生活上の些細な出来事まであらゆる出来事が不安を抱く対象となります。
また不安が原因で、
- 絶えず続くいらだち
- 集中困難
- 疲れやすさ
- 不眠
などの症状も出るとされます。
全般性不安障害の生涯有病率は3%とも!
全般性不安障害は、中年の女性には発症しやすいとされており、生涯発症率は3~5%もあるとされます。
「100人いたら3~5人も全般性不安障害になるの?」とやや疑問の残る数値ですが、長い人生を過ごしていると、どこかのタイミングで発症することがあるのかもしれませんね(^^;)
原因は特定はされていませんが、慢性の環境ストレスが関連していることが多いとされます。
治療は、抗不安薬、抗うつ薬、認知行動療法などが行われるそうです。
全般性不安障害の問題を解説
さて、最初の問題の解説をしていきます。
まず62歳の女性と好発する年齢層の患者さんに設定されていますね。
そして、全般性不安障害の症状と思われる部分を抜粋すると
- 物忘れへの不安
- 旅行先で体調を崩すのが不安で旅行を取りやめる
- 救急車のサイレンで孫の事故を想像してしまう
などが挙げられます。
物忘れに関しては、高齢になると認知症になる可能性があるので誰しも不安を抱くでしょうが、「体調を崩すのが不安で楽しみにしていた旅行をキャンセル」や「サイレンで孫の事故を連想」は明らかに正常ではないですよね。
特に救急車のサイレンでいちいち、身内の事故を連想していたら、本当に心は休まらないのでつらいですよね( ;∀;)
実際、この患者さんもめまいや動悸といった症状が出ていますね。
あと、半年前からと書かれており、長期間の不安の持続も満たしています。
以上から、全般性不安障害と診断できます。
他の選択枝も検討すると…
a うつ病
⇒確かにうつ病では、脳の活動が低下するので「物忘れ」は見られても良いのですが、意欲の減退や不眠など典型的な症状が見られませんね。
b Pick病
⇒これは前頭側頭型認知症という病気で、前頭葉と側頭葉の障害メインで起こる障害です。前頭葉は考えることを司る部分ですので、Pick病では性格変化や自発性の低下といった症状が見られるのですが、この患者さんでは見られませんので誤りです。
d 身体表現性障害
⇒これは現在は身体症状症と言われる病気で、「痛みがあるのに検査で異常が見当たらない」といった病気です。今回は不安が原因なので、間違いです。
e Alzheimer型認知症
⇒物忘れの代表的な疾患ですね。ただ、この患者さんは実際に物忘れがあるわけではなく、「物忘れをしているのではないか?」という不安に困っているので、誤りですね。
最後にもう一問チャレンジ!
医師国家試験 第106回D12
全般性不安障害の患者の訴えと考えられるのはどれか。
a 「人前で話すとすぐに顔が赤くなります」
b 「おなかの痛みが癌ではないかと心配です」
c 「いつも緊張して、休まるときがありません」
d 「誰もいないところで発作が起こるのが心配です」
e 「鍵をかけたのか、何度も確認しないと気が済みません」
ある程度の不安は、日常生活を過ごす上で良い意味でのプレッシャーになるのかもしれませんが、不安が持続すると心はもちろん、不眠・めまい・動悸など体にも悪影響がでます。
ですので、「過度の不安」は信頼のおける人(や専門家)に相談するなどして、早めに対処していきたいものですね( ;∀;)
最後までお読みいただきありがとうございました!
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