学習障害って何?~”本人の努力不足”や”親のしつけ”が原因ではない点が重要
ドラマ「俺の家の話」にも登場
今回は、学習障害について紹介してみたいと思います。
先日、長瀬智也さん主演の「俺の家の話」というドラマがスタートしましたね!
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— 『俺の家の話』第2話は1月29日(金)よる10時👌✨ (@oreie2021) December 19, 2020
初回放送日&ポスタービジュアル解禁🔥
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金曜ドラマ #俺の家の話 の初回放送日は
2021年1月22日金曜よる10時スタートに決定です‼️
な、ん、と初回は15分拡大🔥🔥
みなさんお楽しみに👨👩👧👧
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見てください〜🥰🥰
\掟破りの長男、帰ってまいりました/ pic.twitter.com/NxJAjEA9fc
そのドラマの中で長瀬さんが演じる主人公の息子が学習障害という設定で登場していました。
ドラマを見ていて、
と思ったので少し調べてみました。
まずは医師国家試験問題にチャレンジ
医師国家試験 第108回 D20
8歳の男児。学校へ行きたがらないことを主訴に母親に連れられて来院した。成績は中程度であるものの文字を書くことが苦手で、特に漢字を見本通りに書き写すことができない。このために教師や親から叱責されることが多くなり学校に行きたがらなくなった。友達関係に問題なく、運動も普通にできる。手先はやや不器用であるものの神経学的診察で他に異常を認めない。
この疾患について誤っているのはどれか。
a 男児に多い。
b 知能は正常範囲であることが多い。
c 注意欠陥多動性障害の合併が多い。
d 成人まで基本症状は持続することが多い。
e 作業に真剣に取り組ませると書字は改善することが多い。
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e 作業に真剣に取り組ませると書字は改善することが多い。
発達障害と学習障害の違いは?
精神科の世界で良く用いられるDSM-5という診断基準に基づくと、学習障害は発達障害の一部です。
下の図を見ていただくとわかりやすいかと思います。
発達障害には学習障害の他に、言葉の発達の遅れやコミュニケーションの障害を伴う自閉症スペクトラム障害。
不注意や多動性が認められる注意欠陥多動性障害(ADHD)などもあります。
学習障害の特徴は?
学習障害は、読み・書き・計算など、ある特定の能力のみが、本人の年齢から期待されるよりも明らかに低い状態をさします。
「知的発達に遅れがないのに」という点も重要ですね。
例えば
・文字を読むのが困難
・文字や文章を書くのが困難
・計算が苦手
・数学的な推論が苦手
などの症状があります。
統計的には、男児に多く、他の発達障害であるADHDや自閉症スペクトラム障害との合併が多いとされます。
より細かくは、識字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、計算障害(ディスカリキュア)などと分類されます。
特に、識字障害(失読症、ディスレクシア)はハリウッド俳優のトム・クルーズさんが自ら公表したため、社会に広く認知された背景があります。
学習障害は親のしつけが原因ではない!
学習障害は本人の努力不足が原因でもない
学習障害の原因は、本人の努力不足や親のしつけのせいという意見がたまに聞かれますがこれは間違いです。
学習障害の原因はわかっていませんが、脳の異常が疑われています。
つまり、「本人が怠けている」からとか「ご両親のしつけが悪い」から学習障害の症状が生じるわけではないということです。
最近は、大人のADHDなどの知名度が高くなり、発達障害全般への社会の理解が高まったため、こういった考えを持つ方は減ってきていると思いますので、今後もっとこういう流れが進んでいけば良いなと思います。
本人に合った学習方法を見つけるのが重要!
ADHDの注意欠陥症状にはメチルフェニデートという集中力を高める薬がありますが、残念ながら学習障害には根本的な治療法は存在しません。
そのため、現時点では本人の理解力の応じた適切な教育を受けることが重要とされます。
例えば、識字障害(ディスレクシア)であれば、視覚情報の処理が苦手とされます。
「つ」「く」「え」という紙に書かれた文字列を見て、それを「机」という漢字であったり、机そのものをイメージすることが難しいとされます。
視覚情報が苦手な人に対して、視覚情報をメインにした紙媒体の学習は非効率的ですよね。
ですので、こういった場合には、読み聞かせなど「音声」を中心にした勉強に切り替えるなどが重要です。
トム・クルーズさんが、セリフを音声に録音してもらい、それを何度も聞いて覚えているというのは有名な話ですよね。
もちろん、学習障害全ての方がトム・クルーズさんのように活躍できるわけではないと思いますが、苦手を克服したり、得意な面を活かして活躍されている例もあるので、繰り返しになりますが学習障害ではその人に合った教育方法を探すというのが極めて重要です。
また、学習障害の発見が遅れると、その過程で両親や学校の先生などから怒られたりしてうつ病や不安障害を併発するケースもあるようなので、早期に発見するということも重要です。
最後に国試問題の解説
教師や親の叱責は良くない
問題文から要点を抜き出すと以下のようになります。
- 成績は中程度であるものの文字を書くことが苦手
- 特に漢字を見本通りに書き写すことができない
- 教師や親から叱責されることが多くなり学校に行きたがらなくなった
成績は中等度であるにも、関わらず「文字を書くことだけが苦手」ということなので、学習障害のうち、書字〔表出〕障害(ディスグラフィア)が疑われますね。
尚、「教師や親から叱責されることが多くなり学校に行きたがらなくなった」という部分は、先程も言及しましたが、学習障害の誤った指導による典型的な二次障害ですね。
学習障害は、本人の努力のせいではないので、叱責することで改善することはありません。
むしろ叱責のせいで勉強嫌いや不登校になる可能性があるので、これは絶対に避けなければなりません。
おそらく、医師国家試験を作成した厚生労働省も、教育的観点から、あえて誤った指導例を載せたのだと思われます。
各選択肢の解説
各選択肢を見ていきましょう!
誤っている選択肢を選べという問題でしたので、
a 男児に多い。
⇒これは正しかったですね。学習障害に関わらず、発達障害全般は男児に多いとされます。
b 知能は正常範囲であることが多い。
⇒知能は正常にも関わらず、特定の能力(読み・書き・算数)のみ苦手というのポイントでしたね。正しいです。
c 注意欠陥多動性障害の合併が多い。
⇒これも正しいですね。ADHDや自閉症スペクトラム障害の合併が多いです。
d 成人まで基本症状は持続することが多い。
⇒根本的な治療はなく、残念ながら成人まで症状が持続することは多いです。
e 作業に真剣に取り組ませると書字は改善することが多い。
⇒これが正解です。学習障害は、根性論的に真剣にやらせてどうこうなる問題ではありません。脳が原因と考えられているため、苦手な方法でやらせても改善は見られません。
大切なことは、本人に合った学習方法を見つけるということでしたね。
学校の教育はどうしても「黒板を写す」が前提となっているので、なかなか書字障害は対応が難しいかもしれませんが、今は音声入力なども登場しているので、その人に合った勉強法をなんとか見つけていくというのが適切な対応法かと思われます。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました!
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