精神科医を目指す医大生の備忘録

精神科に興味あるけど、どうやって勉強したらいいかわからない。という悩みを解決するために医師国家試験を解説しつつ、勉強していくことにしました!一般の方でも解けちゃったりするので、ぜひともお付き合いくださいませ!

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あの斎藤茂吉が実は精神科医だったとご存知ですか?~定期的な「心の掃除」の大切さ

息子の斎藤茂太先生も精神科医であり作家

今回も自分の好きな本の紹介です。

タイトルは、『「心の掃除」の上手い人 下手な人』です。

 

「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫)

「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫) 

 

著者の斎藤茂太先生(通称モタ先生)は精神科医であり、旅行好きな作家でした。2006年に90歳で亡くなられています。

著書は多数あり、また日本旅行作家協会の初代会長だった縁もあり、2016年に旅にかかわる優れた著作を表彰する「斎藤茂太賞」が創設されています。

心が散らかっていると、人に会いたくなくなる?

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散らかっているイメージ

本の前書きは次のように始まります。

掃除といえば、普通は、部屋の掃除、家の掃除、庭の掃除…ということになるのだろうが、その前に「心の掃除」も、日々こまめに、やっておきたいものだ。

 

その日その日をイライラすることおもなく、ベソベソすることもなく、グズグズすることもなく、「すっきりとした気持ち」で過ごせたら、どんなにいいか。

 

ところで、こんな言葉を聞いたことはないだろうか。

「家が散らかっているのは、心が散らかっているから」と。

「心のありようは、部屋の整理整頓、片づけ具合でわかる」と。

 

ある日突然、親しい知人が家を訪ねてきたとしよう。そのとき、あなたは、

「久しぶりね。うれしいわ」

と上機嫌な顔を見せながら、頭の中には「まずい、部屋が散らかっている」という思いが走っているのではないだろうか。

 

それは、いくら親しい人でも「見られたくな」からであろう。なぜ見られたくないかといえば、自分の「心の中」まで見られているような気がするから……。

(以下中略)

 

「部屋の掃除」も「心の掃除」も心理的には同じだ。

私たちは親しい人に会う時でも、

「なんか、今日は、あの人とは会いたくないなあ」と思うことがある。

そんなときというのは、自分の心の中が掃除されていない、がらくたでいっぱいになっているからのように思う。

散らかっている部屋を見られたくないように、自分の「心の汚れぐあい」を親しい人に見られたくない、そういう心理が作用しているのだろう。

(以下略)

 「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫)  前書きより引用

 

著者のモタ先生は、自宅が散らかっている際に、他人に部屋を見られたくないのと同様、心が散らかっている時には、「心の汚れぐあい」を見られるように感じて、人に会いたくなくなると主張します。

 確かに、自分自身でも経験がありますが、忙しくなったりして、何から手をつけるべきかわからなくなったりすると人間イライラしてしまったりしますよね。

また上手くいかないことが続くと、だんだん自信を無くして、人と話したり会うことが億劫になっていきます。

そんな時は、「心の掃除」からはじめるのがいいように思うとモタ先生は提案します。

紙に書きなぐって、くしゃくしゃポイがいい!?

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嫌なことは、紙に書いてゴミ箱へ!

本の中には、いくつか具体的な方法が書かれていますが、そのうちの1つを紹介します。

憂鬱な気分を継続させないコツは、自分の気持ちを吐き出してしまうことです。腸の中にあるものを何日もためておけないように、嫌なことはため込まずに早く出してすっきりさせた方が良いのは言うまでもありませんよね。

 

例えば、会社で働いていて上司に嫌味を言われた際には、

「上司だからって、そんなに偉いのか!?」

「あんただって、できてないじゃないか!?」

くらい言うことができればどれほどすっきりするでしょうか?

 

でも、現実にはそうはいけませんよね。怖くて言えないですし、仮に言えたとしても、その後に、また新たな悩みが増えるのが関の山です。

そこでモタさんが提案するのが、嫌なことは紙に書いて、うっぷんを晴らすというものです。

  これは私の何十年もの週間だが、イヤなことは、紙に書いて、うっぷんを晴らしてしまうのだ。

<H課長のふすらハゲ!私がちょっと計算間違っただけで、○○さんの前であんなに叱らなくていいじゃないの・・・・・>

と、ノートに書きなぐる。

口で言えないくらい汚い言葉を使ってもいい。

人様に見せるものではないのだから、どんなに汚い感情であっても良い。

相手の似顔絵を描いて、その上からバカ、マヌケ、トンマ・・・と書きなぐって、後は、紙をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱にポイっだ。

これで清々する。

 「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫)  p65~66より引用

 

なかなか過激な部分もありますが、紙に書いても人に見せるわけではないから問題はないですよね。

今の時代なら、ツイッターやインスタグラムなどのSNSに投稿するという手もあるかもしれません。

ただ、SNSの場合は、色んな人の目に触れる可能性があるので、言葉遣いや表現に注意を払う必要があり完全にストレス発散はできないので、紙に好き放題書く方が効果的なのでは?と思ったりしています。(SNSだと、他の人に共感してもらえるというメリットもあるので一長一短かもですが)

後は、パソコンやスマホの画面に打ち込むよりも、「実際に紙に書いて、その後くしゃくしゃっとしてゴミ箱に投げ入れる」という動作自体にも心をすっきりさせる効果がある気がします。

負の感情があるのは自然なこと

私自身がモタさんの文章に非常に共感できた点は、精神科医の先生であっても、負の感情を持つのは普通なんだ」という点です。

精神科志望の学生としては、「どんなに嫌なことがあっても気にしないような鉄の心を身に付けなければ!」なんて思っていた時期もあるのですが・・・

モタさんの文章を読んで「精神科医の偉い先生でも負の感情を紙に書いて解決するなら、自分も嫌なことがあったり、辛いことがあった時は、素直につらい、しんどい、くやしい、なにくそ~!!! と心の中で負の感情を吐き出していんだー」と思えるようになりました。

負の感情が「あること」と「他人にぶつけること」は別

「負の感情があること」自体は誰しも自然なことですが、それを「他人にぶつける」のは良くないですよね。

もちろん、時々は友達や家族、同僚に愚痴ることは大切だと思いますが、いつもそればかりでは、相手に嫌われたり、距離を置かれたりしてしまいますよね。

そこで、今回のように、「紙に書きなぐってからゴミ箱に捨てる」など、自分なりの対処法を身に付けておけると良いですね。

本の中で他に紹介されている方法としては

・下手に悩むよりも、よく眠りよく食べる

・歩く儀式で、気持ちの「オンとオフ」を分ける

などが挙げられています。

私自身も、ストレスが溜まるとやけ食いをしてしまう節があります(笑)

 

この本には、これ以外にも「力の抜き方のコツ」など精神科医らしい、日々病まずに前向きに生活するためのヒントがたくさん書かれています。

書かれている内容は、巷の自己啓発本に書かれている内容と重複している部分もあるのかもしれないですが、モタ先生の精神科医としての臨床経験を織り交ぜつつ、非常にゆるいトーンで執筆されているので、個人的には大好きな本です。

もしよければまた目を通してみてください!

ちなみにモタ先生は、精神科医としても著名で、現在の日本精神科病院協会の名誉会長をされていたり、アルコール健康医学協会の会長をされていたそうです。

父、茂吉はどんな精神科医だった?

斎藤茂太先生の父親はかの有名な歌人斎藤茂吉で、彼も精神科医でした。

国語の教科書や便覧などに「死にたまふ母」が載っていることが多いので、斎藤茂吉歌人という印象の方が多いでしょうが、実は精神科医としても活躍していたようです。

なぜ精神科医になったのか?

茂吉の実家は経済的に余裕がなかったため、東京で開業していた精神科医斎藤紀一の家に養子候補としてお世話になったことが、きっかけで医者になったようです。

一方で、創作活動の方は、中学時代に開始し、高校時代に正岡子規の歌集を読んでから、歌人を志すようになったそうです。

ちなみに出身大学は現在の東大医学部である「東京帝国大学医科大学」なので優秀だったんでしょうね。。。(;^ω^)

どんな精神科医だったのか?

ウィキペデアからの情報で申し訳ないのですが、精神科医としても評判が良かったようです。

医者としても、かなりの腕を持ち、患者には優しく接して評判が良かった。ドイツ留学時代から膨大な精神医学書を購入し、論文を著述する計画であったが、これらの既に日本に送り届けてあった書籍を留学からの帰朝直前に青山脳病院の火災で焼いてしまった。この火災の原因は茂吉の帰朝を祝う餅つきの残り火であった。茂吉は、保険失効状態で全焼という、ほぼゼロからの再起で病院を全盛期以上の規模にまで復興させ、経営者としても尋常でない手腕を示している。

斎藤茂吉 - Wikipedia

当時、精神医学の先端であったドイツのウィーンにも留学されていたので、精神医学にも熱心だったのだと思います。

実際、斎藤茂吉本人も「歌は業余のすさび」と称していて精神医が本業だと主張していたようです。

ただ、息子の北杜夫〔こちらも精神科医〕は、「茂吉の心の9割は歌にあった」と主張しているので、本当の所はわかりませんね。

精神科医で作家の先生は実は多い

閉鎖病棟で有名な作家の帚木蓬生先生も精神科医だったりと、精神科医は「心を扱う診療科」のため、結構文学活動や執筆活動をされている先生が多い印象を受けます。

 

閉鎖病棟-それぞれの朝-

 閉鎖病棟-それぞれの朝-

 

ちなみに閉鎖病棟精神科病院についての小説で、近年映画化されていましたね!

以前にこちらの記事で簡単に紹介させていただきました。

www.d-lemon.site

 

「心の掃除」で定期的なメンテナンスを

 著名な精神科医の先生について、調べてみるとなかなか興味深いので、今後とも勉強していけたらと思います。

話は元に戻りまして、再び首都圏で緊急事態宣言が出されたりと、また大変な状況になってきました。新型コロナウイルス感染症の日常生活に与える影響は大きく、精神面にも無意識的に負担がかかっていると思います。

ぜひ、定期的に「心の掃除」をして心身共に健康を保ってこの難局を乗り切っていきたいものですね。(もちろん、辛くなった時は、迷わずにお近くの精神科クリニックに通ってくださいね!!精神科医の先生方がきっと心の支えになってくれるはずです!)

 

 以上、長文お付き合いありがとうございました。

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