精神科医を目指す医大生の備忘録

精神科に興味あるけど、どうやって勉強したらいいかわからない。という悩みを解決するために医師国家試験を解説しつつ、勉強していくことにしました!一般の方でも解けちゃったりするので、ぜひともお付き合いくださいませ!

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夜寝れない時にずっと布団にいるのはダメ?~医師国家試験で学ぶ睡眠医学

不眠症は今や国民病!

今回は、医師国家試験でも時々出題される「睡眠」について医師国家試験を題材に解説させていただきます!

 

まず第108回の医師国家試験からの出題です。

医師国家試験第108回 H30
50歳の女性。不眠を主訴に来院した。寝床に入っても何時間たっても眠れないのがつらいと訴える。一方、ソファでテレビを見ているとウトウトすることがある。睡眠がとれた翌日は気分もよく趣味を楽しむことができる。
この患者への指導として適切なのはどれか。
a 「昼寝をしてください」
b 「寝床で本を読んでください」
c 「起床時間を遅くしてください」
d 「早めに寝床に入ってください」
e 「眠れない時は寝床から出てください」 

正解はこちらをタップ

e 「眠れない時は寝床から出てください」

 

何日以上眠れない日が続くと不眠症

誰しも眠れないことはありますよね( ;∀;)
 
大切のプレゼン発表の前日とか、寝る前にゲームをしてしまって興奮したりなどなど
 
ただ、一日とか二日間だけ眠れないだけで不眠症とはならないですよね。
 
ではどの時点で不眠症という病気になるのでしょうか?
 
一応、
一ヶ月以上にわたって不眠が改善しない場合を不眠症
と定義されます。
 
具体的には、次の2つが重要になります。
  1. 長期間にわたり夜間の不眠が続き
  2. 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する

 

5人に1人が不眠という調査も

 厚生労働省の運営しているサイトによると、日本人を対象にした調査において、5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答したそうです。
 
加齢とともに不眠は増加するため、60歳以上の方では3人に1人が睡眠問題で悩んでいるとされます。
 
高齢化が進む我が国にでは、今後不眠症で悩まれる方はますます増えそうですね( ;∀;)

 

眠れない時に、頑張って寝ようとするのは逆効果?

さて、最初の問題の解説になるのですが、

 

e「眠れない時は寝床から出てください」 

 

が正解になります。

 

これは意外に思われた方も多いのではないでしょうか?

 

実際、自分自身も

 

「眠れない時は、布団の中で眠気が来るのを待つ!」

 

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羊を数えるが定番ですが、効果はいかほどに?

 というのが常識だと思っていたので(^^;)

 

布団の中で寝れないことが心理的プレッシャーに?

理由はいくつかあるようですが、1つ目は、

 

眠れないことを気にすると、交感神経優位になって、かえって目が冴える

 

というものです。

 

よく「自律神経を整える」なんて言葉を耳にするように、

 

人間の興奮とリラックスは自律神経の交感神経副交感神経のバランスによって調整されています。

 

簡単に言えば、交感神経がアクセルで、副交感神経がブレーキに相当します。

 

交感神経は、緊張状態で活性化します。例えば興奮すると手汗が出ますが、あれは交感神経の働きですね。他にも怒っている人の瞳孔が開くのも交感神経の影響です。

 

睡眠をするためには、リラックスした状態である必要があるので、本来はブレーキ優位の副交感神経が働く状態にする必要があります。

 

しかし、「明日は大切な試験だきゃ寝ないと!」などと考えてしまうと、プレッシャーがかかって交感神経が活性化して余計に寝れなくなってしまうという訳です。

 

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寝ようと思うと、余計寝れなくなったりしますよね💦

 

以上の理由から、眠れない時は布団から出て、リラックスするのが良いと言われています。

「布団=寝る場所」という意識付けを!

別の理由としては、「寝れない状態なのに布団に居続ける」ということを繰り返すうちに、「布団≠眠る場所」という誤った意識付けがなされてしまうといものです。

 

これは、エビデンスがしっかりあるわけではないので俗説にはなりますが、確かに寝れない時に布団の中でスマホをいじったりする習慣がつくと、睡眠週間には悪影響がありそうですよね。

 

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医学的には「布団スマホ」は最悪ですが、やっちゃいますよね(´;ω;`)

 

他に睡眠に良くないことは?

先程の問題の間違い選択肢から、誤った睡眠週間を考えてみましょう。

a 「昼寝をしてください」

⇒当然ですが、不眠の人が昼寝をすると余計に夜寝れなくなりますよね。


b 「寝床で本を読んでください」

⇒「寝床で」というのが良くないですよね。布団の中では「睡眠」以外はしないようにして、「布団=寝る場所」という週間をつけましょう!


c 「起床時間を遅くしてください」とd 「早めに寝床に入ってください」

⇒これもダメですね。寝れない時は、「遅寝、早起き」が重要と言われています。

特に、太陽の光を浴びて、サーカディアンリズムをリセットするのが重要です!


似たような問題が繰り返し出題されています!

医師国家試験では、最初に示したような睡眠の問題が繰り返し出題されているので、最後にもう一問見てみましょう!

 

第114回C13
入眠困難を主訴とする不眠症の成人患者に対する指導として適切なのはどれか。

a 「一定時刻に起床し日光を浴びましょう」
b 「可能な限り早い時刻に就床しましょう」
c 「就床前にアルコール飲料を飲むようにしましょう」
d 「一晩に8時間以上就床しているようにしましょう」
e 「就床後、入眠できない時はじっと眠気が来るのを待ちましょう」

 これは去年の医師国家試験ですね。

正解はこちらをタップ

a 「一定時刻に起床し日光を浴びましょう」

「遅寝、早起きで日光を浴びる!」が重要でしたね!

 

 

 

 

 誤った選択肢も見てみましょう。

 

b 「可能な限り早い時刻に就床しましょう」

⇒無理に早く寝る必要はないんでしたね。逆に無理に早く布団に入ってしまうと、「布団≠眠る場所」という誤った習慣がついてしまいます(^^;)


c 「就床前にアルコール飲料を飲むようにしましょう」

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寝酒も良くないです!

これも寝酒なんて言葉がありますが良くありません。

 

確かに、アルコールを飲んだ直後はリラックス(鎮静作用)できて入眠できることもあるようですが、アルコールが分解されてしまうとかえって覚醒作用が出て、夜中に目覚めてしまうなど睡眠の質低下につながります。

 

また寝る前にお酒を飲むということが習慣化すると、アルコール依存症にもつながる可能性があるので、そういった観点からも推奨されていません。


d 「一晩に8時間以上就床しているようにしましょう」

睡眠時間も〇時間以上という決まった時間はありませんね。

個人差がありますので、自分自身がしっかり休養できる睡眠時間をとりましょう。

 

短時間睡眠がもてはやされた時期もありますが、睡眠時間は短くても大丈夫な人もいれば、長めに寝ないといけない人もいます。

 

なので、「短時間睡眠=すばらしい」、「短時間睡眠=かっこいい」という風潮は医学的に望ましくないと思います(^^;)

 

最後に
e 「就床後、入眠できない時はじっと眠気が来るのを待ちましょう」

は、今回の記事のメインテーマで、「自信をもって✖ですね!」ですね!

 

睡眠の医師国家試験問題は他にも色々あるので、また別の機会に紹介できたらと思います!

 

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!(^^)!

 

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女性の方がうつ病になりやすいってご存知ですか?

女性の方が1.5倍程度うつ病になりやすい

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最近読んでいた本に書いてあったのですが、実は女性の方がうつ病になりやすいそうです。

個人的には、「働き盛りの男性(責任世代)がうつ病になりやすい」というステレオタイプがあったのですが、実情は違うようです。

 

実際2017年の患者調査によると、

気分障害躁うつ病含む)で入院する患者さんは男性18,000人に対して、女性は29,000人と1.6倍多くなっています。

また外来についても同様に、男性60,000人に対して、女性は81,000人と
1.35倍多くなっています。

なぜ女性の方がうつ病になりやすいのでしょうか?

その理由はいくつか挙げられますが、読んでいて本によると最も大きな理由は、女性は社会的な地位が弱く、ストレスが多いことにあると書かれていました。

 

また、妻、母と役割が変化すること、近所づきあいや親戚づきあいのほか、PTA関係など、気を使わなければならない人間関係が多岐にわたることも原因ではないかと記載されていました。

 

それ以外の理由としては、女性ホルモンの変化が関係しているとされます。

一生を通じて、妊娠・出産・閉経などホルモン分泌が変化するため、それに応じて精神面にも影響が及ぶからです。

産後うつの問題も医師国家試験にでている

一昨年の医師国家試験にも産後うつに関する問題が出題されています。

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医師国家試験第113回 F63
34歳の女性(1妊1産)。産後2週の妊産婦健康診査を希望して、分娩した産科診療所に来院した。2週間前に第1子である3,150gの男児を経膣分娩した。来院時の体温36.5℃。脈拍80/分、整。血圧126/76mmHg。尿所見は蛋白(-)、糖(-)。内診で子宮復古に異常は認めず、悪露も正常であった。母乳哺育を行っているが、うまくできているかとても心配で毎日よく眠れない。育児は全く楽しくなく、ときに自分を傷つけたいとの思いが浮かぶという。日本語版エジンバラ産後うつ病質問票〈EPDS〉への自己記入の結果、合計点数は12点(基準8以下)であった。

この時点の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

抗精神病薬を処方する。
b 精神科への受診を提案する。
c 児と分離することを目的に入院させる。
d 本人の同意を得て市町村に患者情報を伝える。
e 母乳哺育を中止し人工乳哺育にするように指導する。

 

産後うつは次のように定義されます。

 産後うつ病はおよそ10%の罹患率があり、気分の落ち込みや楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などを訴え、産後3か月以内に発症することが多いです。

マタニティブルーズが通常は1-2週間でおさまるのに対し、症状は2週間以上持続します。マタニティブルーズがあった女性は産後うつ病発症のリスクが高まると言われています。

発症の背景要因として、うつ病の既往の他、パートナーからのサポート不足など育児環境要因による影響も大きいとされています。妊娠中から不安やうつの問題がおこっている場合も少なくないため、妊娠中からケアを行う必要があります。

産後うつ病について教えてください – 日本産婦人科医会

 マタニティーブルーズは産後の女性であれば、誰しも起こり得る可能性がありますが、抑うつ症状が2週間以上続く場合は、問題中にも登場するエジンバラ産後うつ病質問票〈EPDS〉などでスクリーニングをして、患者さんが産後うつに移行していないかチェックする必要があります。

この問題の患者さんは、エジンバラ産後うつ病質問票で基準以上だったので産後うつが疑われるため、「精神科受診の提案」「本人の同意を得て市町村の支援センターに連絡する」が正解になります。よって、bとdが正解になります。

 

私自身、 臨床実習で産後うつ患者さんの問診をさせていただいた経験がありますが、遠方から引っ越しされたばかりで、周りに頼れる人がいない方で、ただでさえ慣れない環境での新生活に加えて、生まれたばかりの赤ちゃんの子育てもあり本当に大変そうでした。

 

今年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で出生率の低下が注目されていますが、どのような時代でも子供を産んで育てるということは本当に大変なことだと思います。

 

ですので、社会的なサポートがより充実することを願うばかりです。

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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あの斎藤茂吉が実は精神科医だったとご存知ですか?~定期的な「心の掃除」の大切さ

息子の斎藤茂太先生も精神科医であり作家

今回も自分の好きな本の紹介です。

タイトルは、『「心の掃除」の上手い人 下手な人』です。

 

「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫)

「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫) 

 

著者の斎藤茂太先生(通称モタ先生)は精神科医であり、旅行好きな作家でした。2006年に90歳で亡くなられています。

著書は多数あり、また日本旅行作家協会の初代会長だった縁もあり、2016年に旅にかかわる優れた著作を表彰する「斎藤茂太賞」が創設されています。

心が散らかっていると、人に会いたくなくなる?

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散らかっているイメージ

本の前書きは次のように始まります。

掃除といえば、普通は、部屋の掃除、家の掃除、庭の掃除…ということになるのだろうが、その前に「心の掃除」も、日々こまめに、やっておきたいものだ。

 

その日その日をイライラすることおもなく、ベソベソすることもなく、グズグズすることもなく、「すっきりとした気持ち」で過ごせたら、どんなにいいか。

 

ところで、こんな言葉を聞いたことはないだろうか。

「家が散らかっているのは、心が散らかっているから」と。

「心のありようは、部屋の整理整頓、片づけ具合でわかる」と。

 

ある日突然、親しい知人が家を訪ねてきたとしよう。そのとき、あなたは、

「久しぶりね。うれしいわ」

と上機嫌な顔を見せながら、頭の中には「まずい、部屋が散らかっている」という思いが走っているのではないだろうか。

 

それは、いくら親しい人でも「見られたくな」からであろう。なぜ見られたくないかといえば、自分の「心の中」まで見られているような気がするから……。

(以下中略)

 

「部屋の掃除」も「心の掃除」も心理的には同じだ。

私たちは親しい人に会う時でも、

「なんか、今日は、あの人とは会いたくないなあ」と思うことがある。

そんなときというのは、自分の心の中が掃除されていない、がらくたでいっぱいになっているからのように思う。

散らかっている部屋を見られたくないように、自分の「心の汚れぐあい」を親しい人に見られたくない、そういう心理が作用しているのだろう。

(以下略)

 「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫)  前書きより引用

 

著者のモタ先生は、自宅が散らかっている際に、他人に部屋を見られたくないのと同様、心が散らかっている時には、「心の汚れぐあい」を見られるように感じて、人に会いたくなくなると主張します。

 確かに、自分自身でも経験がありますが、忙しくなったりして、何から手をつけるべきかわからなくなったりすると人間イライラしてしまったりしますよね。

また上手くいかないことが続くと、だんだん自信を無くして、人と話したり会うことが億劫になっていきます。

そんな時は、「心の掃除」からはじめるのがいいように思うとモタ先生は提案します。

紙に書きなぐって、くしゃくしゃポイがいい!?

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嫌なことは、紙に書いてゴミ箱へ!

本の中には、いくつか具体的な方法が書かれていますが、そのうちの1つを紹介します。

憂鬱な気分を継続させないコツは、自分の気持ちを吐き出してしまうことです。腸の中にあるものを何日もためておけないように、嫌なことはため込まずに早く出してすっきりさせた方が良いのは言うまでもありませんよね。

 

例えば、会社で働いていて上司に嫌味を言われた際には、

「上司だからって、そんなに偉いのか!?」

「あんただって、できてないじゃないか!?」

くらい言うことができればどれほどすっきりするでしょうか?

 

でも、現実にはそうはいけませんよね。怖くて言えないですし、仮に言えたとしても、その後に、また新たな悩みが増えるのが関の山です。

そこでモタさんが提案するのが、嫌なことは紙に書いて、うっぷんを晴らすというものです。

  これは私の何十年もの週間だが、イヤなことは、紙に書いて、うっぷんを晴らしてしまうのだ。

<H課長のふすらハゲ!私がちょっと計算間違っただけで、○○さんの前であんなに叱らなくていいじゃないの・・・・・>

と、ノートに書きなぐる。

口で言えないくらい汚い言葉を使ってもいい。

人様に見せるものではないのだから、どんなに汚い感情であっても良い。

相手の似顔絵を描いて、その上からバカ、マヌケ、トンマ・・・と書きなぐって、後は、紙をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱にポイっだ。

これで清々する。

 「心の掃除」の上手い人 下手な人 (集英社文庫)  p65~66より引用

 

なかなか過激な部分もありますが、紙に書いても人に見せるわけではないから問題はないですよね。

今の時代なら、ツイッターやインスタグラムなどのSNSに投稿するという手もあるかもしれません。

ただ、SNSの場合は、色んな人の目に触れる可能性があるので、言葉遣いや表現に注意を払う必要があり完全にストレス発散はできないので、紙に好き放題書く方が効果的なのでは?と思ったりしています。(SNSだと、他の人に共感してもらえるというメリットもあるので一長一短かもですが)

後は、パソコンやスマホの画面に打ち込むよりも、「実際に紙に書いて、その後くしゃくしゃっとしてゴミ箱に投げ入れる」という動作自体にも心をすっきりさせる効果がある気がします。

負の感情があるのは自然なこと

私自身がモタさんの文章に非常に共感できた点は、精神科医の先生であっても、負の感情を持つのは普通なんだ」という点です。

精神科志望の学生としては、「どんなに嫌なことがあっても気にしないような鉄の心を身に付けなければ!」なんて思っていた時期もあるのですが・・・

モタさんの文章を読んで「精神科医の偉い先生でも負の感情を紙に書いて解決するなら、自分も嫌なことがあったり、辛いことがあった時は、素直につらい、しんどい、くやしい、なにくそ~!!! と心の中で負の感情を吐き出していんだー」と思えるようになりました。

負の感情が「あること」と「他人にぶつけること」は別

「負の感情があること」自体は誰しも自然なことですが、それを「他人にぶつける」のは良くないですよね。

もちろん、時々は友達や家族、同僚に愚痴ることは大切だと思いますが、いつもそればかりでは、相手に嫌われたり、距離を置かれたりしてしまいますよね。

そこで、今回のように、「紙に書きなぐってからゴミ箱に捨てる」など、自分なりの対処法を身に付けておけると良いですね。

本の中で他に紹介されている方法としては

・下手に悩むよりも、よく眠りよく食べる

・歩く儀式で、気持ちの「オンとオフ」を分ける

などが挙げられています。

私自身も、ストレスが溜まるとやけ食いをしてしまう節があります(笑)

 

この本には、これ以外にも「力の抜き方のコツ」など精神科医らしい、日々病まずに前向きに生活するためのヒントがたくさん書かれています。

書かれている内容は、巷の自己啓発本に書かれている内容と重複している部分もあるのかもしれないですが、モタ先生の精神科医としての臨床経験を織り交ぜつつ、非常にゆるいトーンで執筆されているので、個人的には大好きな本です。

もしよければまた目を通してみてください!

ちなみにモタ先生は、精神科医としても著名で、現在の日本精神科病院協会の名誉会長をされていたり、アルコール健康医学協会の会長をされていたそうです。

父、茂吉はどんな精神科医だった?

斎藤茂太先生の父親はかの有名な歌人斎藤茂吉で、彼も精神科医でした。

国語の教科書や便覧などに「死にたまふ母」が載っていることが多いので、斎藤茂吉歌人という印象の方が多いでしょうが、実は精神科医としても活躍していたようです。

なぜ精神科医になったのか?

茂吉の実家は経済的に余裕がなかったため、東京で開業していた精神科医斎藤紀一の家に養子候補としてお世話になったことが、きっかけで医者になったようです。

一方で、創作活動の方は、中学時代に開始し、高校時代に正岡子規の歌集を読んでから、歌人を志すようになったそうです。

ちなみに出身大学は現在の東大医学部である「東京帝国大学医科大学」なので優秀だったんでしょうね。。。(;^ω^)

どんな精神科医だったのか?

ウィキペデアからの情報で申し訳ないのですが、精神科医としても評判が良かったようです。

医者としても、かなりの腕を持ち、患者には優しく接して評判が良かった。ドイツ留学時代から膨大な精神医学書を購入し、論文を著述する計画であったが、これらの既に日本に送り届けてあった書籍を留学からの帰朝直前に青山脳病院の火災で焼いてしまった。この火災の原因は茂吉の帰朝を祝う餅つきの残り火であった。茂吉は、保険失効状態で全焼という、ほぼゼロからの再起で病院を全盛期以上の規模にまで復興させ、経営者としても尋常でない手腕を示している。

斎藤茂吉 - Wikipedia

当時、精神医学の先端であったドイツのウィーンにも留学されていたので、精神医学にも熱心だったのだと思います。

実際、斎藤茂吉本人も「歌は業余のすさび」と称していて精神医が本業だと主張していたようです。

ただ、息子の北杜夫〔こちらも精神科医〕は、「茂吉の心の9割は歌にあった」と主張しているので、本当の所はわかりませんね。

精神科医で作家の先生は実は多い

閉鎖病棟で有名な作家の帚木蓬生先生も精神科医だったりと、精神科医は「心を扱う診療科」のため、結構文学活動や執筆活動をされている先生が多い印象を受けます。

 

閉鎖病棟-それぞれの朝-

 閉鎖病棟-それぞれの朝-

 

ちなみに閉鎖病棟精神科病院についての小説で、近年映画化されていましたね!

以前にこちらの記事で簡単に紹介させていただきました。

www.d-lemon.site

 

「心の掃除」で定期的なメンテナンスを

 著名な精神科医の先生について、調べてみるとなかなか興味深いので、今後とも勉強していけたらと思います。

話は元に戻りまして、再び首都圏で緊急事態宣言が出されたりと、また大変な状況になってきました。新型コロナウイルス感染症の日常生活に与える影響は大きく、精神面にも無意識的に負担がかかっていると思います。

ぜひ、定期的に「心の掃除」をして心身共に健康を保ってこの難局を乗り切っていきたいものですね。(もちろん、辛くなった時は、迷わずにお近くの精神科クリニックに通ってくださいね!!精神科医の先生方がきっと心の支えになってくれるはずです!)

 

 以上、長文お付き合いありがとうございました。

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リカバリーという言葉の意味~心の病気になると本人も家族もつらい

リカバリーとは、自分らしく生きていくことを取り戻す過程

 今回は、年末に読んだ本の紹介です。

統合失調症の人の気持ちがわかる本」という本なのですが、実際に統合失調症の患者さんとその家族を対象に実施したアンケートをベースに執筆された本です。

 

そのため、統合失調症の患者さん自身やそのご家族が悩まれていることについて知ることができる本です。

 

自分は、実習で何度か統合失調症の患者さんと接したことがあるのですが、なかなか患者さん自身に話を伺う機会が無かったり、あったとしても上手く聞き出すことが出来なかったりしたので、この本を通して「実際困っていることは何か」を知ることが出来て大変勉強になりました。

 

統合失調症の人の気持ちがわかる本 (こころライブラリーイラスト版)

統合失調症の人の気持ちがわかる本 (こころライブラリーイラスト版)

リカバリーとは?

この本の中の『「リカバリー」について知ろう』というコラムが大変良かったので、少し抜粋させていただきます。(以下、統合失調症の人の気持ちがわかる本 (こころライブラリーイラスト版)p48より抜粋)

 

・病気が人生を決めるわけではない

英語の「リカバリー」には、「回復」、「改善」などの意味がありますが、近年、アメリカなどでは「リカバリー」は単に病気や障害が「治る」ことよりも、もう少し広い意味で使われるようになっています。日本でも、その考え方が受け入れられるようになってきています。

病気の部分に注目し、「治る」ことだけをゴールととらえると、思うように回復が進まないときにはいらだち、あたかも自分の人生が決まってしまったかのように感じてしまいます。

「精神病や障害があるから無理ではないか」と自分自身を「病気」の枠の中に封じ込め、自分らしく生きることが難しくなってしまいます。

 

・自分で自分らしく生きることを決める

一方、リカバリーとは、「自分らしく生きていくことを取り戻す過程」そのものを指します。自分にとって、大切なこと、価値あることが人によって違うように、「リカバリーとは何か」は、人によって異なります。

100人いたら、100通りのリカバリーがあるといっても過言ではありません。

たとえ病気や障害があっても、周囲のサポートを受け、薬を使いつつ、自分らしく元気に生きる。

そのために必要なことを「患者」としてでなく、「一人の人間」として選びとっていく。

そして自分らしく、意味のある人生を送る。

その道のりすべてが、リカバリーなのです。

 精神疾患は治るのに時間がかかる

統合失調症うつ病などの精神疾患は治るまで年単位の時間がかかることがあります。

例えば、統合失調症の根本的な原因は明らかになっていませんが、疾患の発症に長期間の強いストレスが関係していると言われています。

病気の発症以前から患者さんの精神に長期的に大きな負荷がかかっているため、治療にもその分時間がかかりますよね。

また治るといっても、「骨折が治る」といった完全に元通り復元するという意味とは少し異なり、症状が最重症の時よりは良くなるといったニュアンスの場合もあります。

ですので、患者さん自身や家族が治療経過にもどかしさを感じるはよくあるようです。

そんな際に、完全に元通り治ることを目指すのではなく、今回のリカバリー(自分らしく生きていくことを取り戻す過程)という発想を目標に持つことができれば、少しだけ心の余裕を持って治療に取り組めるのかなと感じました。(「自分らしく」って言葉が、肩ひじ張らない感じで個人的には、いいなと思いました。)

 

緩徐な発症や思春期の発症は予後が悪い

ちなみに過去の医師国家試験にも、緩徐な発症は予後不良因子として出題されています。

第107回医師国家試験 D20
統合失調症の良好な予後に関連するのはどれか。3つ選べ。
a 緩徐な発症
b 思春期の発症
c 病前の良好な社会適応
d 発症における誘因の存在
e 循環気質的傾向の病前性格

ちなみに、正解の予後良好の因子はc,d,eとなります。

逆に、緩徐な発症だと薬が効きにくかったり、周りにの人に病気だと気づいてもらえないなどの理由で予後が良くないようです。

確かに、昨日まで元気だった友達が、いきなり「自分はCIAに狙われている」と真顔で言い出したら、なんかおかしいと気づいてもらえますもんね。それが、数ヶ月や年単位で進行すると、その人の個性として扱われて病気が見逃される可能性がでてきますよね。

他に、統合失調症は10代後半から20代前半の若年男性に発症することが多いのですが、若いときに発症してしまうと、社会経験を積んでいないので、コミュニケーション能力がきちんと形成されていないため、治りが良くないとも言われています。

例えば、一度働いたことがあれば、統合失調症になった後でも復職できる可能性は高いですが、学生時代に発症し場合、改善した後にそこからはじめての就職活動となると、なかなか就職が難しいという現実があるようです。

 

精神疾患は本人も家族も苦しい

精神疾患にかかると、本人が苦しいのはもちろんですが、治癒過程が緩徐で時間がかかるため、サポートする家族もその歩みの遅さにもどかしさやいらだちを覚えることも少なくありません。

そういった本人と家族の葛藤についてこの本はわかりやすく書かれていました。

統合失調症は急性期→消耗期→回復期の三段階に進むので、本の内容を抜粋しつつそれぞれの時期の本人と家族の葛藤の例をみてみましょう。

急性期

発症直後の神経の興奮が激しい時期。妄想や幻覚などの症状がでる。

◆本人のつらさ

・幻想や妄想に悩まされる

・否定的な内容の妄想が多く、強い不安にさいなまれる

・周囲が症状を理解せず、孤独を感じる

◆家族のつらさ

・何がなんだかわからない

・突然の発症にどう対処していいかわからない

・予期せぬ事態に恐れを抱く

 

消耗期

急性期の反動で急速にエネルギー不足となる時期。元気がない。

◆本人のつらさ

・つらくて何をする気もおきない

・何を見ても心が動かない

◆家族のつらさ

・もどかしく感じる

・先行きに不安を感じる

・元気のない本人にどう接していいかわからない

回復期

少しずつエネルギーがたまり、回復していく時期。

◆本人のつらさ

・あせりが強くなる

・思うようには回復しないことに腹立たしくなる

・周囲の期待がプレッシャーになる

◆家族のつらさ

・回復のスピードを期待していまう

・思ったより回復が進まないと失望や戸惑いを感じる

 

(以上、統合失調症の人の気持ちがわかる本 (こころライブラリーイラスト版)p6より一部抜粋)

 

こういった感じで、治りが遅ければ遅くなるほど、家族の無意識のプレッシャーも強くなり、患者さんの新たな重荷となることもあります。

もちろん、家族からすると「以前はあんなに元気だったのに」という思いがあるので、仕方ない部分もあるのでしょうが、「患者も家族も不幸」という状況は良くないですよね。

今回、この本を読んで精神科医の役割はこういった状況を改善するというのも含まれるのだなと感じました。

例えば「患者さんと家族にリカバリー新たな視点を提供する」ということも、間接的には治療になるはずですよね。

 

精神科について詳しく勉強すればするほど、精神疾患は簡単に治らないという厳しい現実や精神科医にできることは非常に小さいということを痛感させられます。

だからこそ、標準的な医学的治療だけでなく、細かいサポートもできるような精神科医になれたらなと思う次第です。

 

こういった「患者さんの気持ち」が書かれた本から学べることは大変多いので、引き続き「うつ病」や「発達障害」など違う病気の本も読んで、また紹介できればと思います!

 

以上、長文お読みいただきありがとうございました。

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心療内科と精神科の違いって何? どっちに通ったら良いのか? などを調べてみました!

心療内科と精神科の違いって何?

 前から気になってたので調べてみました!

あけましておめでとうございます。

本年はいよいよ医学部6年生。

就職活動や卒業試験、年明けには医師国家試験があり、色々がんばらないといけない一年ですが、「心のゆとり」が一番大切だと思いますので、ほどほどに歩んでいきたいと思います。

 

さて、今回は個人的に前から気になっていた「精神科」と「心療内科」の違いについて調べてみました。

 

近年、心の病気を扱うクリニックも市民権を得て、街中にもずいぶん増えましたね。

ただ、それぞれのクリニックの標榜科が「精神科」、「心療内科」だけのクリニックもあれば、「心療内科・精神科」と併記されているクリニックもあります。

 

はたまたメンタルクリニックという名称を冠したクリニックもあります。それぞれって何が違うのでしょうか?

 

あなたが通うならどちらに通いたいですか?

簡単にツイッターでアンケートをとってみました。

総数が20ちょっとなので、あくまでもほんの一部の意見になるのですが、結果はやや心療内科がリードって感じですね。

 

みなさんなら、いかがでしょうか? 

 

個人的には、精神科志望なので「精神科」という表現に抵抗がないのですが、やはり自分も医学部入学前には「精神科」という響きに抵抗があったので、世間の方々の「精神科」と「心療内科」に対するイメージがそのまま反映された結果なのかもしれません。

 

心療内科と精神科の違いは?

医学的には精神科と診療科の違いは何なのでしょうか?

厚生労働省のサイトには以下のように記載されていました。

医療機関の選び方|医療や医療機関について|治療や生活に役立つ情報|みんなのメンタルヘルス総合サイト

 

精神科

精神科、神経科、精神神経科

「精神科」、「神経科」、「精神神経科」は同じものです。どれかが書いてある場合や、併記してある場合は、「うつ病」「統合失調症」「神経症性障害」などのこころの病気を診ている、精神科の医療機関と考えて間違いありません。

 精神科は直観的にもイメージしやすいと思いますが、「心の病気」をメインに扱っている診療科であることがわかりますね。

 

一方で、心療内科はと言いますと、

心療内科

心療内科」は心理的な要因で身体の症状(胃潰瘍、気管支ぜんそくなど)が現れる、いわゆる「心身症」を主な対象としています。

となっています。

つまり、心理的な要因で発症する体の病気を扱うことがメインとなっています。少しわかりにくいかもしれませんが、例えば「仕事の精神的なストレスが強くて胃の粘膜が障害されて胃潰瘍になる」なんかが当てはまりますね。

 

ここが驚きですね。私自身、以前の心療内科のイメージは、下のイラストのように「精神科全般+αの内科疾患」というイメージでした。

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以前の心療内科のイメージ

 

ところがどっこい、心療内科うつ病発達障害統合失調症といったいわゆる「心の病気」は守備範囲ではないようなんです。

 

実際に、日本心療内科学会の紹介リーフレットには、心療内科が扱う疾患として次のような記載がされていました。

心療内科で診る主な疾患

消化器系の心身症 . . .  機能性胃腸症, 過敏性腸症候群, 慢性膵炎など

 内分泌・代謝系の心身症 . . .  糖尿病, バセドウ病, 摂食障害など

 呼吸器系の心身症 . . . .気管支喘息, 慢性閉塞性肺疾患, 慢性咳嗽など

 神経・筋肉系の心身症 . . .  緊張型頭痛, 片頭痛, 痙性斜頸など

 循環器系の心身症 . . .  高血圧, 冠動脈疾患, 不整脈など

 自己免疫・アレルギー系の心身症 . . .  アトピー性皮膚炎, 慢性蕁麻疹, 関節リウマチなど

 その他の疾患 . . .  . 疼痛性障害, 慢性疲労症候群など

 

 

 

ちなみに、もうひとつややこしいのが神経内科ですね。

神経内科の説明は次のようなものです。

神経内科

神経内科」は、パーキンソン病脳梗塞、手足の麻痺や震えなど、脳や脊髄、神経、筋肉の病気を診る内科です。精神的な病気を主に診ているわけではありません。

 

神経内科は、脳梗塞パーキンソン病など、脳の病気をメインに扱う診療科だとわかりますね。

 

以上より、精神科、心療内科神経内科の三つの守備範囲を図式化すると次のようなイメージになるでしょうか?

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精神科・心療内科神経内科の守備範囲(イメージ)

ちなみに、近年メンタルクリニックなるものも登場していますが、これは精神科とほぼ同義だと思います。

精神科と心療内科を併記するのと同じ感じで、「メンタルクリニック」と併記した方が患者さんが通いやすいことが理由ではないでしょうか。

 

結局、精神科と心療内科どちらに通った方が良いのか?

通院前にホームページを確認するのが一番!

学会の定義に従って心療内科の守備範囲 を考えるなら、心療内科うつ病発達障害などの精神疾患は扱わないことになるので、精神疾患の診断・治療目的で通院するなら精神科を標榜しているクリニックに通院すべきだと思います。

 

とはいえ、現実には心療内科メインで標榜しているクリニックは少なく、「心療内科・精神科」と標榜しているクリニックが多いのではないでしょうか?

 

こういう場合はどうしたら良いのでしょうか?

 

併記しているケースでは、精神科の先生が、患者さんが通いやすいように「心療内科」と併記していることが多いように感じます。(実際、私も低学年時に精神科クリニックで受け付けバイトをさせていただいた経験がありますがそのクリニックは心療内科・精神科と併記していました。)

 

ですので、結論的には、通院するクリニックの「ホームページ」を見てどのような病気を診療しているか確認するというのが一番だと思います。

 

心療内科と併記していても、「うつ病発達障害などの診療をする」と記載されていれば問題ないと思います。

 

それでも不安な方は、開業医の先生の経歴を見ていただくと良いかと思います。その先生が「精神科専門医」を取得されていれば、精神科疾患の専門家ですので、安心して心の病気の相談ができると思います。

 

心療内科目的の場合は逆に要注意

逆に、ストレスでの胃潰瘍や喘息など「心療内科」の診療目的の場合は注意が必要です。

 

今回調べてみてはじめて知ったのですが、心療内科専門医は全国に120名程度しかいらっしゃらないようです(127名 平成25年8月現在:日本専門医制評価認定気候調べ)。

 

一方で、精神科専門医は全国に1万名以上いるので、約10倍程度いることになります。

 

つまり、心療内科・精神科と併記している場合は、実際は先程述べたように本当の専門は「精神医学」というケースが多いです。

 

ですので、内科クリニックで原因がわからなかった腹痛など、もし心療内科メインでかかりたいなら、「心療内科専門医」を取得されている先生のクリニックに通われた方が良いかもしれません。

 

もちろん、優秀な先生はどちらも診れる先生もいらっしゃるでしょうし、良心的な先生であれば、自分の専門外であれば別のクリニックを紹介してくださると思いますので、あくまでも一つの意見として受け止めて頂けるとありがたいです。

 

本当は、精神科クリニックに気兼ねなく通えるのが一番

今回調べて思ったのは、一般の方には「心療内科≒精神科」と思っている方が多い一方で、学会の提示した守備範囲では「心療内科≠精神科」となっているので、両者のギャップが存在する点ですね。

 

この原因は、最初にも述べたように「精神科」という言葉の響きにまだまだ負の印象があるからだと思います。

 

個人的には、気分が落ち込んで精神科クリニックに通うということは、風邪を引いて内科のクリニックに通院することと本質的には同じだと思っています。人生は長いですので、誰しも風邪を引いたりするように、心の病気なることもあると思います。風邪を引いたら薬に頼るので、心の病気になった時に一時的に薬に頼ることは自然なことだと思います。

 

現実はなかなか厳しかもしれないですが、もっと気軽に精神科クリニックに通えるようになれば、精神科・心療内科の併記問題も解消されるのかもしれないですね。

 

以上、長文お付き合いありがとうございました。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

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【精神科救急】攻撃性のある状態の患者さんにはどう対応したらいい? 医師国家試験106H11

医師国家試験 精神科 106H11

106H11
医療面接中に語調やしぐさに怒りの感情を伴っている患者への対応として最も適切なのはどれか。
a 直ちに別の医師に交代する。
b 患者の怒りの感情を無視して面接を続ける。
c 反応として生じた医師自身の怒りの感情を表現する。
d これまで行った診療行為の医学的正当性を主張する。
e 何が患者を怒らせたかを理解したいという気持ちを伝える。

 純粋な精神科救急の問題は医師国家試験には出題されていないので、今回は精神科救急っぽい問題を選びました。

テーマは「医療面接中に語調やしぐさに怒りの感情を伴っている患者への対応」ですね。

詳細な解説は最後に行いますが、正解はeですね!常識的な問題なので正答率も100%近くあったようです。

もちろん、教科書的には納得できるのですが、実際の医療現場では、医療従事者も人間ですので、a~dのような対応してしまうケースもあるかもしれませんね。

そもそも精神科救急とは?

精神科救急は、精神症状のある患者への救急対応

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精神科救急のイメージ

精神科の救急について詳しく記載された「精神科救急診療ガイドライン2015」というものが存在します。それによると、以下のように大変丁寧な定義がされています。

1.精神科救急とは?
 精神疾患によって自他への不利益が差し迫っている状況を「精神科救急状態」と定義する。

  ~中略~
 精神科救急医療が指し示す内容は,狭義には救急外来での危機介入や医学的処置などの救急診療であるが,広義には急性期入院医療が含まれる。これが最も重要な領域である。双方の包含をあえて強調する場合は,「精神科救急・急性期医療」と並列的に表記することもある。
 単に「精神科救急」というときは,以上のすべてを包括する総称で,前記のどれに重点を置くかは文脈による。

ただ、長すぎて直感的にわかりにくいので「精神科救急=精神症状のある患者への救急対応」と理解しておけば良いと思います。

精神科救急には4パターンある!

 こちらの本によると精神科救急には4つのパターンに分類できるそうです。

 一つ目は、精神疾患患者が身体疾患に罹患して救急搬送されてくるケースです。

例えば、統合失調症の患者さんが腸閉塞になったり、認知症の患者さんが肺炎になるなどですね。

二つ目は、精神疾患向精神薬により、身体症状を呈して救急搬送されてくるケースです。

例えば、解離性障害の患者さんが昏迷症状に陥ったり、統合失調症の患者さんが抗精神病薬によって悪性症候群という病気になるとい感じです。

三つめは、自殺未遂や自傷に及んだケース

四つ目は、身体疾患や入院に伴って、新たな精神症状を発症したケースです。

これは、転倒などにより頭部外傷をした結果、脳にダメージが生じて興奮や易怒性が生じるなどですね。

精神科救急と一般の救急の違いは?

普通の救急との違いは行動因子とサポ―ト因子

一般的な身体疾患の救急対応と精神症状を抱えた患者さんの救急はどのように違うのでしょうか?

それを端的にまとめてくれた表がガイドラインにあったので以下に引用させていただきます。

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精神科救急ケースの緊急度評価(ガイドラインp16参照)

この五角形チャートによると、精神科救急ケースの緊急度評価の項目として

  1. 病状因子
  2. 治療関係因子
  3. 時間帯因子
  4. 行動因子
  5. サポート因子(家族因子)

の5つが挙げられています。

病状の重症度(病状因子)、治療歴がどの程度行われているか(治療関係因子)、いつ救急搬送されるか(時間帯因子)は、心筋梗塞などの身体疾患でも関係する要素だと思います。

一方で、患者さんが自傷や他害をするリスク(行動因子)や、家族から患者さんのこれまでの情報が聞けるか(サポート因子)は特に精神科救急で重要な要素になってくるのかなと思います。

精神科の救急はどのように運用されている~埼玉県を例に

このような特性を持つ精神科救急ですが、実際はどのように運用されているのでしょうか?

具体例として、埼玉県の精神科救急体制について見てみましょう。(埼玉県を選んだ理由は特にありません。)

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埼玉県の精神科救急医療システム

精神科救急医療システム事業:埼玉県精神科病院協会

埼玉県では、基本的に平日の昼間は保健所、平日夜間や休日の対応は、精神科救急情報センター(県立精神保健福祉センター内)が窓口となっているようです。

そして、保健所や精神科救急情報センターの対応に判断によって、その日の当番の病院に依頼するという流れのようです。

ただ、症状の程度によってはより専門的な期間である県立精神医療センターや、埼玉医科大学付属病院が紹介されるということもあるようです。

どの都道府県でも、似たような精神科救急システムがとられていると思いますので、興味があればご自身の都道府県のシステムについて調べてみたください。

攻撃性のある患者さんに遭遇したら、実際どうしたらいい?

精神症状のある患者さんが救急外来に来るといっても、妄想症状の悪化、自殺企図、攻撃性、意識障害、中毒症状など様々です。

今回は、最初に紹介した医師国家試験でも扱われていた怒りや興奮、攻撃性といった症状を示す患者さんへの対応について簡単に紹介させていただきます。

まずは予防が大切

興奮状態で救急搬送される患者さんもいますが、診察途中で興奮状態になる患者さんもいらっしゃいます。そのため、事前に患者さんが興奮状態に陥った場合に備えて、環境整備を行ったり、また患者さんが興奮状態に入る際の徴候を知っておくことが重要のようです。

ガイドラインに記載された内容を抜粋すると以下のようなものが挙げられます。

1.環境整備

武器になるものを置かない、警報システムの整備

2.危険因子を知る

暴力歴、アルコール、物質乱用歴、武器の使用歴、最近の重大なストレス(特に喪失体験)、薬剤の影響、精神疾患の既往、反社会的な人格傾向

3.攻撃性の徴候

生理的変化(発汗、呼吸促迫、脈拍増加)、表情の変化(緊張、瞳孔散大)、話し方、会話の変化、落ち着きがなくなる

攻撃性のある患者さんへの介入はディエスカレーション

ディエスカレーション(de-escalation)とは専門用語になるのですが、次のような意味があります。

心理学的知見をもとに、言語的・非言語的なコミュニケーション技法によって怒りや衝動性・攻撃性を和らげ穏やかな状態に戻す。

 escalateはエスカレーターからわかるように、「段階的に拡大する」と意味があります。それに「de」という接頭語がつくことで「段階的に、小さくする」という意味になります。

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de-escalationのイメージ

 

ディエスカレーションの10要素は、サービス業でも有効!?

海外の論文でde-escalationで重要な10個の要素が紹介されています。日本語訳はこちらのshareslideを引用させていただきました。

1.パーソナルスペースに配慮
2.挑発しない
3.言葉による介入
4.簡潔にする
5.希望や感情を確認する
6.患者の言葉を丁寧に聞く
7.相手を認める、見解の不一致があっても争わない
8.法の話を持ち出す
9.選択してもらう、落ち着いてもらう
10.患者とスタッフに周知する

こういった、対応は精神科救急に関わらず、サービス業でのクレーマー対応等でも活用できそうですね。

ちなみに、ガイドラインにはもっと具体的に記載されているのですが、いくつか興味深いものを抜粋すると

 患者に対応する前に,暴力発生を誘発したり,けがの原因になる,あるいは武器として使用される可能性のある所持品(ネクタイ,スカーフ,装飾品,ペン,ハサミ,バッジなど)を除去する

 精神科医はネクタイをしないは有名ですが、確かにネクタイに関わらず、名札とかボールペンとかも注意が必要そうですね。

これ以外には、

・いかなる時も相手に背を向けない
・壁やコーナーに追い詰められないようにする 

なんかは、もはや格闘技の選手へのコーチのアドバイスでは!?みたいな感じですが、緊急時には医療従事者が自分の安全を確保することが一番重要なので、こういった具体的なアドバイスガイドラインに記載されているのでしょうね。

 

 一番は、患者さんが興奮しないですむこと

以上、精神科救急について色々と記載してきましたが、最も重要なことは、そもそも患者さん自身が興奮や攻撃性といった状態に陥らないような医療を提供できることだと思います。

患者さん自身も、別に誰かを攻撃したいと本気で思っているわけもなく、その背景に何らかの疾患が隠れていることがほとんどです。

とはいえ、精神科疾患は急変することもあるため、現実に精神科救急を無くすことは難しいでしょう。ですので、もしもの時に備えて、精神科救急の知識を日頃から学んでおくことは重要だなと感じました。

問題の解説はこちら

「医療面接中に語調やしぐさに怒りの感情を伴っている患者への対応」に関する問題でしたね。

a 直ちに別の医師に交代する。

→色々努力をした結果、どうしてもその患者さんと上手く接することができなければ、別の医師に交代するということは現実にあり得ると思います。とはいえ、まずは正解のeのように共感の気持ちを示すことが模範的ですね。


b 患者の怒りの感情を無視して面接を続ける。

→これは最悪ですね。de-escalationでなく逆にescalateしちゃうことになります。

 

c 反応として生じた医師自身の怒りの感情を表現する。

→これも一切意味がないですね。こちらもb同様患者さんがescalateしてしまいますね。

 

d これまで行った診療行為の医学的正当性を主張する。

→気持ちはわからなくないですが、患者さんが怒りの感情を向けてきているときにこのような対応をしても逆効果ですね。

 

e 何が患者を怒らせたかを理解したいという気持ちを伝える。

→正解です。落ち着いた対応で、患者さんの気持ちをde-escalateしましょう。

 

以上、長文お付き合いいただきありがとうございました。

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【書籍紹介】初学者にお勧めしたい精神科の本まとめ~2020年編

2020年もあと少しで終わりですね。

ということで、今年読んだ精神科関係の本で、初学者の自分でも読みやすかった本を簡単にまとめさせていただきます!

 

導入は漫画に勝るものはなし!

Shrink~精神科医ヨワイ~

一つ目は、Shrinkという精神科に関する漫画です!

最近第4巻が販売されたのですが、精神科の疾患について初学者でも理解やすいように、丁寧に描かれた漫画です。イラストも個人的には大好きです。

 

第一巻のメッセージは次のように記載されています。

パニック障害うつ病発達障害──。隠れ精神病大国と呼ばれる日本は、その名の通り、精神病患者の数自体は、アメリカ等と比べると少ない。その一方で、自殺率は先進国の中でも最悪レベル。悩んでいても“精神科は特別なところ”という思いこみが、人々の足を遠のかせてしまう…。
精神科医・弱井は、そんな日本の現状を変えていき、一人でも多くの“心”を救うべく、こう願う──。
「僕はこの国に、もっと精神病患者が増えればいいと思っています」

 ストレス社会と言われて久しいですが、まだまだ「精神科や心療内科に行くのはちょっと…」と考えてしまう人も多いのが現状です。

その一つの原因としては、「精神科ではどのよな医療が行われているかイメージできない」ことがあると思います。

この本では、パニック障害うつ病発達障害双極性障害摂食障害といったメジャーな精神疾患についての診断方法や治療について丁寧に描かれているので、読み進めるうちに精神科ってそんな特別な場所じゃないんだーと思っていただけるのではないでしょうか?

漫画のため、肩ひじ張らずに読めるので、「精神科ってどんなところだろう?」と思っている方にはおすすめです。来年以降の続編も期待ですね。

 

精神医療に携わる援助者側の考え方を知るならコレ!

援助者必携 はじめての精神科

一般の方というよりは、精神医療に興味がある方向けの本にはなりますが、ですます調で、初学者でも読みやすく記述されています。

 自分は、精神科に興味を持ち始めてから「治療する側の医療者は、どういう考え方で患者さんに向き合っているんだろう?」という疑問があったんですが、それを解消してくれる本でした。

 

本の紹介メッセージはこんな感じです。

きれいごと一切ナシ!
口は悪いが役に立つ!

同じ精神科の最前線で働く者だけが知る共感力を全開にした「超実践的アドバイス」集は、いよいよ第3版へ。
クレーマー対策、援助者としてのアイデンティティの保ち方、当事者・家族に対峙する時のちょっとしたコツなど、「こんなこと、誰も教えてくれなかった」度はますますアップ!
はじめて精神科に足を踏み入れたなら誰もが感じる「不安」が、優しく解きほぐされます。

 

 著者の春日先生は多数の本を執筆されているのですが、タイトルに「はじめての」とあるように春日先生の本の中で一番初学者向けだと思います。

 

目次は次のような感じです。

はじめに

I アプローチの基本――迷わないための考え方
 1 援助者としての姿勢を自己点検する
  2つの姿勢を使い分ける
  たとえばクレーマーと向き合うとき
  「経験」とはパターンを増やすこと
  パターンとしての病名
  「そうこなくっちゃ」というセリフのこと
 2 人は素直に助けを求められない
  困っているのは誰か
  選択肢というキーワード
  妄想という説明装置
  人はつらさを何かに託す
  もう一度、困っているのは誰か?
 3 心の余裕がすべてに優る
  陰性感情は伝わるか
  「様子を見る」ために
  「待つ」ために
  人事を尽くして天命を待つ
 4 「問題が解決する」とは?
  解決より「落としどころ」
  目標設定という落とし穴

 個人的にこの本が好きな理由は、きれいごとでなく、精神科医療のリアルを記述してくれる点です。

私自身、精神科の勉強をするまでは「精神科に行けば、患者さんの病気はきれいさっぱり治る」的な安易な発想を抱いていたのですが、この本を読んで見事に打ち砕かれました。

もちろん、ADHDの注意欠陥症状や軽度のうつ病など治療によって奏功する場合もあるのですが、認知症や慢性期の統合失調症などは現代医学では簡単に治るものではありません。

変な希望を抱かせるのでなく、リアルな現実を伝えてくれる点に非常に共感が持てました。

目次の『解決より「落としどころ」』からも伝わるように、現実の精神科医療は結果を白黒ハッキリさせることは難しく、その中間の良い「落としどころ」のグレーゾーンを探していくという感じなのだなーというが理解でき、精神科医療に従事するのはなかなか大変なのだろうなと知ることができました。もちろん、その分やりがいもあるのだと思います!

 

いずれにせよ、初学者が「精神科医医療の現実を知る」という点では非常におすすめの一冊です。(2000円ちょっとと医学書にしてはお手頃価格ですし(^^♪)

 

少し真面目に精神科の勉強を始めるならコレ!

専門医がやさしく語るはじめての精神医学

 精神科医の渡辺先生が、看護学生向けに執筆された本です。

専門医がやさしく語るはじめての精神医学

 ちゃんと精神科を勉強しようと思うと一度は教科書的な本を読んだ方が良いと思います。

ただ、医学生向けの本は「値段が高い、分厚い、難しい」の三重苦でなかなか手を出しにくいですよね。自分も御多分に漏れずそんな感じだったのですが、この本はオーソドックスな内容を平易に記載されているので、初学者でもつまずかずに読めると思います。

 

精神科医療にかかわるメディカルスタッフ(看護師,臨床心理士理学療法士作業療法士精神保健福祉士など)をめざす学生に向けて精神医学の講義を長年受け持ってきた著者の「講義ノート」をまとめた好評教科書の改訂第2版.DSM-5,新薬,法改正に対応し,さらにわかりやすくなった精神医学の入門書.

 

看護学生向けの本は、内容がうすい」なんて考える方もいらっしゃいますが、個人的には必要最低限の内容を平易にまとめるというのは、精神科の本質を理解していなければ成し遂げられないことだと思いますので、個人的にエッセンスがギュッとつまった素晴らしい本だと思います。

 

もちろんこの本を読んで、もっと詳しく学びたいという方は、「標準精神科学」など有名な本もぜひ読んでみてください!

 

精神科の本を読んでつまずいたらコレ!

精神疾患にかかわる人が最初に読む本

 妄想知覚、言葉のサラダ、観念奔逸、思考奪取・・・・など、精神科の用語と初学者泣かせですよね(´;ω;`)自分自身、最初はここでつまずきました・・・・

 

そんなあなたも、この本を読んだら解決です!

精神疾患にかかわる人が最初に読む本

精神疾患にかかわる人が最初に読む本

  • 作者:西井重超
  • 発売日: 2018/10/29
  • メディア: 単行本
 

精神医学の必要最小限の知識を、イラストを用いながら、ひとめでわかるように解説した精神医学の入門書。
いろんな人とうまくかかわることが出来るようになるための精神症状と疾患がわかるようになる1冊。 

 

滅裂思考とか、妄想着想などの精神科用語を漫画のイラストとわかりやすいキャッチフレーズでまとめてくれている本です!

精神科を勉強して、精神科用語アレルギーになった方の救世主となる本です。

こういう難しい概念を素人でもわかりやすいように解説できる人は本当にすごいなと尊敬します。

著者の西井先生は「はたらく人・学生」向けのクリニックを開業されているみたいでなかなかユニークに取り組みをされている方です!

 

自分も精神科用語をわかりやすく説明できるように日々努力中でございます。

d-lemon.hatenablog.com

 

以上が今年読んだ中で、精神科初学者向けだなと感じた本です。

これ以外にも素晴らしい本はまだまだたくさんあると思いますので、また来年色んな本に出合えるといいな~と思える次第でございます!

以上、長文お付き合いありがとうございましたー<m(__)m>

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